ケンタッキーがあげてるのはチキンだけじゃなかった!! 入社2年以内離職率ゼロのすごいモチベーションアップ術

ビジネス

公開日:2017/11/30

『ケンタッキー流 部下の動かし方』(森泰造/あさ出版)

 クリスマスが近づくと、目につき始めるのが、ケンタッキー・フライド・チキン(KFC)のCM。竹内まりやさんの歌声がおなじみだが、実は、チキンがクリスマスの定番になっているのは、日本だけだそうで、七面鳥を食べる文化が根づいているアメリカのKFCでは、この時期は閑古鳥が鳴いているという。

 まさにこれからが書き入れ時のKFCだが、ケンタッキーがあげているのは、チキン以外にもあると述べているのが『ケンタッキー流 部下の動かし方』(あさ出版)の著者である森泰造氏。題名から想像がつくとおり、ケンタッキーがあげているのは、チキンに加え、社員のモチベーションなのだ、しかもすごいレベルで。

 飲食業界というと、正社員の半数が入社3年以内に辞めるなど、離職率が高いことで知られるが、そのなかでKFCは、離職率が極めて低いレベルにあり、2015年度にはなんと新入社員の2年以内の離職者数が00(ゼロ)にまでなった。著者は、日本KFCホールディングスの人財育成コーチとして、この新入社員育成改革の実現に大きな貢献を果たした人物だ。

advertisement

 もともと、KFCは、長く勤めるパート・アルバイトや、親子二代で働き続ける人も多いのが特徴で、カーネル・サンダースの時代から受け継がれる独自の企業文化があるという。そのため、離職率が低いのは日本だけでなく、世界125の国や地域で展開される約2万店舗でも同様のレベルにあるというから驚きだ。KFCが学生の就職人気ランキングの上位に入っている国や地域もあるのだそう。本書から、KFCに息づくスタッフのモチベーションを高めるノウハウの一端を紹介してみよう。

 離職率が低く、アルバイトのモチベーションをあげることに定評のあるKFC。その根底を支えているのが「レコグニション=賞賛」の文化だ。具体的には、ほめて育てることが、同社の伝統的な人財育成法なのだという。「ほめる」ことなど、どこでもやっているように思うが、その徹底度合いが、他所とは大きく異なっている。

 まず、KFCでは、従業員が働くうえで大切にすべき行動指標・価値観としてこの「レコグニション」が共有され、徹底されている。また、KFCのライセンスを提供しているアメリカの企業、ヤム・ブランズでも、組織の核となる価値観を示した「共に働くための原則」に、この「レコグニション=賞賛」の大切さが大きく掲げられている。

 KFCでは、新人のトレーニング時から、すべての従業員に「賞賛カード」を渡し、周りの人の言動で賞賛すべきものがあったら記入して、提出するよう教えている。賞賛した内容は、全員が閲覧できるように事務所に掲示される。「ほめられる」こととはすなわち「認められる」こと。「レコグニション」文化が根づいている組織では、人は「職場は自分が輝ける場所である」と考えるようになるという。そこにいて行動するだけで「認められ、ほめられ、時には表彰される」のだから、当然だろう。職場を“自分が輝ける場所”と思えれば、人はそこから離れようとはしなくなる。むしろ、自分の居場所を守ろうとして働き始める、と著者は言う。

 もちろん、そのためにKFCでは、安心して働くことができる良好な労働環境を整えることや、週ごとに「ほめるテーマ」を決めるなど、さまざまな配慮や工夫が、随所で組織的に用意されているのだそうだ。だからこそ、飲食業界では異常とも言える離職率の低さを実現しているのだろう。読後、スタッフの心からの笑顔を、チキンとともに味わいたくなった。

文=山田次郎