社長がこんなフレーズを口にしたら、あなたの会社は危ない!「時代が変化してもブレないことが一番大事だ」

ビジネス

更新日:2017/12/18

『絶対会社を潰さない社長の口ぐせ』(小山 昇)

 あなたの会社にとって、「敵」といえる存在はなんでしょうか? 多くの場合「ライバル会社」と考えられているようですが、それは違います。「時代の変化」こそ、最大の敵と考えるべきなのです。

 他方で、「時代が変化してもブレないことが大事」といったフレーズを耳にすることがあります。「ブレない」。一見、筋の通った芯のある発言に思えますが、こと会社経営を任された社長の発言だとしたら…その会社は危ない、と言えましょう。

 フランチャイズ事業、中小企業の経営コンサルティング事業を柱に15年連続で増収を続けている企業、株式会社武蔵野。その代表取締役社長である私、小山昇が、「時代が変化してもブレないことが大事」発言の危険性について解説いたします。

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■経営とは「環境適応業」である

———レコードがなかった時代、音楽が好きな人は楽団による「生演奏」を楽しんでいました。

ところがエジソンが生まれ「レコード」ができた。するとレコードは楽団のマーケットを奪い、売上を伸ばしました。

レコードがわが世の春を謳歌していると、今度は「カセットテープ」が登場。音が飛ばないカセットテープは、レコードのマーケットを食い潰しました。

ところが今度は「CD」の誕生によってカセットテープは下火になり、かと思えば現在はインターネットの「音楽配信」が普及し、CDの売れ行きが頭打ちになっています。

 この例が示すように、世の中の変化は、あなたの会社の都合を待ってはくれません。経営とは「環境適応業」です。社長は、時代がどのように変化していくかを見極め、 時代の変化に合わせて、会社をつくり変えていかなければならないのです。分秒の単位で変化する市場・お客様に、いち早く自社を対応させていけるかどうか……。会社が生き残れるかどうかの鍵は、ここにかかっています。現状に甘んじることなく、変化し続けることが会社の定めであり、社長の務めです。

「ブレない」。耳触りのいいフレーズのもと、変化に対応しない・できない社長が経営する会社は、時代に取り残され、やがて潰れてしまうでしょう。

■現状維持は「後退」と同じ

 私が社長を勤める武蔵野の主力事業、「ダスキン代理店業務」は薄利多売のビジネスモデルです。にもかかわらず、ダスキン事業部の労働分配率は比較的高い。月々1000円のマットを 1件ご契約いただくには、およそ1万円もの経費がかかります。販売にもコストがかかるから、粗利を50%とすれば、利益が出るのは、1年半後です。 反対に、「既存のお客様」だけをルーティンで回っていれば、新規開拓のコストが抑えられるため、利益を出せる事業構造です。

 しかし、新規開拓をしなければ、わが社に未来はありません。継続的に売上を上げるには、顧客単価を上げるか、お客様の数を増やすしかありません。とはいえ、お客様は「決めた金額以上は払わない」「ひとつのお店ですべての買い物はしない」ので、顧客単価を上げるのは難しい。となれば、「新規開拓をして、お客様の数を増やす」しかありません。経費を使ってでも新しいお客様を増やして、1年半後に より多くの果実を収穫しなければならないのです。既存のお客様だけでは、現状維持(前年実績)が精いっぱいです。

 しかし、あらゆることが猛スピードで変化する時代にあって、「現状維持」は「後退」と同じです。「後退」の行き着くところは、倒産、買収、消滅しかありません。 中小企業は、変化を起こすことはできません。けれど、変化についていくことはできる。会社が生き残れるかどうかは、社長が「時代の変化に自社を対応させていけるかどうか」で決まります。

――「時代が変化してもブレないことが一番大事だ」。もし、社長がこんなフレーズを口にしたら、あなたの会社は危ないと考えてください。

<著者紹介>
小山 昇(こやま のぼる)

株式会社武蔵野 代表取締役社長。 1948年山梨県生まれ。
2001年から中小企業の経営者を対象とした経営コンサルティング「経営サポート事業」を展開。670 社以上の会員企業を指導しているほか、全国各地で年間240回の講演・セミナーを開いている。主な著書に「社長の決定シリーズ」の『経営計画は1冊の手帳にまとめなさい』『本当に儲ける社長のお金の見方』『絶対に会社を潰さない強い社員の育て方』『右肩下がりの時代にわが社だけ「右肩上がり」を達成する方法』(以上、KADOKAWA)、『残業ゼロがすべてを解決する』(ダイヤモンド社)など多数。