喪服の色が「白」から「黒」に変わったのはなぜ? 天皇のお葬式から分かる時代の変遷

社会

2017/12/1

『天皇家のお葬式』(大角修/講談社)

 明治時代まで、葬儀での服装は「白」が一般的だった。黒い喪服がまったくなかったわけではないのだが、現在のように「喪服は絶対に黒」という考え方は、比較的新しいものなのである。

「白」から「黒」に変わった背景には何があったのだろうか。明治天皇の葬儀を通して、その理由をうかがうことができる。なぜ日本の伝統的な決まりは捨てられ、「黒」が選択されたのか。そこには、時代の流れを象徴する理由があった。

『天皇家のお葬式』(大角修/講談社)は、「天皇とは何かをもっとよく理解する糸口」として、また、天皇の葬儀を通して、時代の変遷を追うことを目的とした一冊である。

 葬儀は、しきたりが重要視されるものなので、それが「変化」することはつまり、「時代そのものが大きく変化している」ことを表しているという。よって、「天皇のお葬式」は日本の歩みを鏡のように映し出す出来事なのである。

 本書は古代から昭和までの天皇家の葬儀について書かれているのだが、歴史学の最新研究をまとめた専門書というわけではない。もちろん、歴史書としての一面はあるのだが、もっと多くの方向性を示す、大変興味深い読み物となっている。

 日本の近代化の手法や日本人の宗教観、または憲法問題であったり、天皇の戦争責任について、昨今話題になっている「生前退位」問題だったり、さらには「これからの日本の在り方」を問うような、社会学的な要素もふんだんに含んでいる。

 お葬式の「歴史」だけだとしたら、興味を持っている人もそう多くはないと思われるが、本書はその枠に収まることなく、多くの読者にとって思いがけない発見や発想をもたらしてくれるのではないだろうか。

 天皇の葬儀が時代の変遷を表す例として、最も顕著なのは明治天皇のお葬式である。江戸時代まで、天皇は仏式での葬儀が行われていた。しかし、お寺で経文を唱えられる葬られ方から、明治期は神式へと変化した。慣習は捨てられ、中世から近世にかけて、ほとんど途絶えていた「古式」に戻ったのだ。そのため、古代の古墳のような山稜も復活している。

「古式」に戻したのは、天皇の権威を強めるためである。なぜその必要があったかというと、「宗教がない日本を、皇室を基軸に国民をまとめあげていくため」である。

 当時の日本には、欧米諸国のような確固とした「宗教」がなかった。しかし、西洋を真似して近代化を図ろうとする日本にとって、「宗教がない」ことは大問題であり、その代わりとして天皇を担ぎ出したのである。

 しかし、葬儀は「伝統的な古式を復活」させたにも拘らず、喪服の色をそれまでの素服(染色していない白い喪服)ではなく、欧米の風習にならって「黒」にしたところに、明治政府の西洋化へ突き進む強い「意志」を感じる。

古式の復興と西洋化は矛盾しているかのように思われるが、伝統は常に新しくつくりかえられ、モダン化されるものである。昔のままではなく、おりおりの「現在」に即した新風を吹き込むところに伝統が再生され、時代を動かす力にもなった。

 天皇のお葬式は時代を映し出す鏡だという理由が、少しお分かりいただけただろうか。

 さて、そうなると平成の天皇は、またその次の世の天皇は、どのような存在になっていくのだろうか。天皇を通して、私たちは日本の未来を考えることもできるのである。

文=雨野裾