何度でも行きたい京都の旅。生粋の京都人が案内する冬のおすすめコースって?

生活

2017/12/2

『京都人にも教えたい京都百景』(鳥居本幸代/春秋社)

 全国各地で紅葉の見頃を迎えた。人気観光地の常連、京都の紅葉は、12月上旬まで楽しめる場所もあると聞く。まさに観光のトップシーズン。古都の魅力に、季節を変えて何度も足を運ぶ人も多い。

『京都人にも教えたい京都百景』(鳥居本幸代/春秋社)は、京都の名所旧跡・70ヶ所の「京都読み歩き」の旅のエッセイである。著者である鳥居本幸代氏は、京都で生まれ育ち「京都探訪がライフワーク」と語る家政学を修めた大学教授だ。京都文化への造詣が深く、平安朝の服飾や、和食の起源や精進料理などの食文化について、複数の著書を既刊する“生粋の京都人”。

 本書の「はじめに」で、著者が「本書は時空を超えて、平安時代や江戸時代にタイムスリップして、京都の名所旧跡を巡ることに主眼を置きました」と述べている通り、紫式部や清少納言といった歴史上の人物の当時の様々な営みに触れながら、文学にまつわるエピソードが綴られている。それは、都の庶民の暮らし・歳時記・食文化、さらに花や名建築・庭園にちなんだ項目にまで及ぶ。奥深い考証に、新たな史実や伝承を知ることができる。知識は多岐にわたり、ひょっとして京都に生まれ育った人も初めて知ることがあるのでは?と想起させる。題名通り、京都の長き歴史に思いを馳せながら、様々な風景が浮かんでくる「京都百景」本である。

 そして、京都のガイドブックとしても活用できるよう、本書紹介の名所旧跡が項目番号で記されている、広域・地域別「京都市街地図」と、著者発案の「12カ月のおすすめコース」の地図のページもついている。

 では、「12カ月のおすすめコース」より「冬」を見てみよう。著者は「冬のおすすめコース」として、12月は“椿”巡りで、妙蓮寺や龍安寺などを推薦。1月は、年明けや初午の混雑を避けつつ、“初春の寺社詣”を提案し、伏見稲荷や萬福寺などや、コース周辺で味わえる名物も紹介。2月のコースは“梅”がテーマ。花や香りを楽しみながら、北野天満宮の宝物殿や勧修寺の「臥竜の老梅」の観賞がおすすめ、だそうだ。

 本文の項目からは「43 紅萌ゆる吉田山の節分 吉田神社」を取り上げたい。節分といえば、京都の人からは「吉田さん」と親しまれる“吉田神社”の名が挙がるとのこと。節分祭には、例年50万人の参詣者で賑わうそうだ。この神社で、現代では“鬼祓いの豆まき”として伝わっている、節分の起源となる行事を見ることができる。

 節分の前後三日間にわたって、疫神祭、追儺(ついな)式、火炉祭が斎行されますが、前夜、行われる追儺式は平安の昔に誘ってくれる奥ゆかしい行事です。そもそも追儺は清々しい新年を迎えるにあたって大晦日に行われた宮廷行事で、一年の邪気を追い払うことを目的としたものでした。(略)大舎人寮(宮中で宿直(とのい)や供奉(ぐぶ)などに従事する部署)から体躯がよい人物が抜擢され、鬼を追い払う「方相氏(ほうそうし)」の役を務めました。(略)現在、吉田神社の追儺式には方相氏と八人の侲子が荒ぶる赤・青・黄色の鬼を駆逐します。

 筆者が以前調べたところでは、昔は季節が切り替わる日の前夜に、疫神や悪霊が訪れ、病気や災いが起こると考えられていたそうだ。その邪気祓いや魔除けとして、旧暦の新年を迎える前夜=大晦日となる、冬と春の季節の分け目の「節分」に豆まきを行うようになったという。上記の宮中行事が、歴史のなかで次第に形を変え、全国に広まったらしい。

 ところで本書には“方相氏”のイラストが出てくるが、「黄金四目」を持つ奇妙な面を被り、鬼を追い払うだけあって、なかなかの迫力。夜に行う追儺式での活躍をぜひ見てみたいものだ。

 冬でもいろいろな見どころがある京都。防寒をしっかりして、立春の頃に訪ねてみるプランはいかがだろうか。

 また本書は、随所に当時の絵画やイラスト、図解も豊富に掲載され、エッセイとともに、京都や歴史が好きな人の知識欲を刺激する。京都が初めての人はもちろん、京都に何度も通っている人にも、興味を引く発見があるだろう。

 京都・古への旅に役立つ一冊となるはず。

文=小林みさえ