「空気が読めない」という才能をつぶしてはいけない!「問題児」の成績を伸ばすルールをカリスマ教育コンサルタントが語る

出産・子育て

公開日:2017/12/6


 忘れ物が多くて、成績が悪くて、空気がまったく読めなくて、言ったそばから同じ失敗を繰り返す問題児。そんなわが子をなんとか「フツー」にしようと悪戦苦闘しているなら、それは無駄な努力です――そう語るのは、教育環境設定コンサルタントの松永暢史氏。自らも筋金入りの問題児で数々のユニークな勉強法をあみ出してきた氏の最新の著作が、『「ズバ抜けた問題児」の伸ばし方』(主婦の友社)だ。学校のカリキュラムでは伸ばしにくい彼らの才能を開花させるためには、親のかかわり方にもルールがあるという。


■中の下の成績だった中学生が、都立のトップ校へ

 理科と音楽が3、社会が4、それ以外はオール2。これが中学2年生、2学期の松永氏の成績だ。そんな氏が進学したのは、都立トップ校である西高校。「まさかお前が西高校に!?」と教師が絶句したという。

「そのころの私は、『どうすれば成績があがるかゲーム』にはまっていました。暗記の仕方、文章の書き方、計算ミスのなくし方など、ゲーム感覚でさまざまな方法を編み出していったのです」

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 たとえば、英単語はひとつずつ覚えるのではなく文章全体を丸暗記してしまう。声に出して何度も繰り返して読むことで英文の構造が頭に入り、単語も覚えてしまうという。
「なかなか面白いゲームでしたが、私がそんな風に前向きに行動できたのは、それまでの育てられ方があったからだと思います」
 松永氏が考える、問題児を伸ばす8つのルールのうちいくつかを紹介しよう。


■問題児を伸ばすルールその1 絶対にコンプレックスを与えない

 無用な劣等感を抱かせないのは、どんな子どもを育てるうえでも大切だ。ただ「問題児」の場合は、ことさらに注意が必要なのだという。

 現代の日本の教育システムでは、「問題児」は学校で確実に劣等感を抱くようにできている。ヘンな奴、KY、不思議ちゃんなどと呼ばれて孤立しがちでもある。それでも前向きでいられる子と、そのままくさってしまう子との違いは何か。それは、「なんといわれても自分は大丈夫だ」という根拠のない自信があるかどうかだという。

「私は、いろいろなことがうまくできない子どもでした。そんな私にいつも母が言っていたのは『あなたは早生まれだから、しょうがないよ』。私はそれを素直に信じていたので、劣等感を抱くことはありませんでした」

 わが子に「できない」ことがあると、それを「できる」に変えたくなるのが親の性。だがそうすると、子どもは「親の期待に応えられない」と傷つき自信をなくしてしまう。親が注目すべきは、わが子の「できる」こと。今できることを「もっとできる」「突出してよくできる」にすることの方が簡単だし、ずっと効果的なのだ。

■問題児を伸ばすルールその2 がまんさせるのではなく、面白がらせる

「やりなさい!」とどなってもやらない。それこそが、「問題児」だ。彼らを動かす方法はただひとつ。面白がらせることだという。

 多くの日本人は、「いやなことを頑張ってやることに価値がある」と思っている。楽しんでラクラクできたことは、その人のためにならないという思い込みがあるのだ。しかし松永氏は「暗記でも、苦しんで覚えたことはすぐに忘れます。でも、楽しんで覚えたことは忘れないんですよ」と言う。確かに、試験前に必死で覚えた歴史の年号は、試験が終わればすぐに忘れてしまう。でも、面白がってオリジナルのゴロ合わせで覚えたものは、大人になってもふと思い出したりするものだ。

「問題児の親は、がまんさせること、辛い思いをさせることが子どものため、という思い込みを捨ててください。そんなことをしても、絶対にいい方向には向かいません」


■問題児を伸ばすルールその3 小学校時代はとことん友だちと遊ばせる

 子どもは遊ばせないとダメになる。遊びの中にはどんな早期教育にもまさる学びがあると松永氏は言う。

「友達との遊び、特に集団遊びは、児童期にはかかせません。相手を傷つけ、責められ、ケンカし、それでも仲直りしてまた遊ぶ。それができるのは子ども時代だけです。子ども同士のそうしたかかわりが、大人としての社会的スキルの基礎となるのです」

 そしてまた、遊びの中には常に試行錯誤があるとも。自分には思いつかないことも友だちなら思いつく。友だちができるようになれば、コツを教えてもらって自分もできるようになる。そうやって子ども時代にとことん遊んだ子は、思春期になると「そろそろ勉強しようか」と思うようになるという。それは、たくさんハイハイした赤ちゃんが、ある日突然歩き始めるのにどこか似ている。

「トラブルは絶えないかもしれません。友だちにからかわれて泣いて帰って来ることもあるでしょう。そのことも全部ひっくるめて、遊びの価値だと受け止めてほしいのです」

■幸せにしようと思わない。面白い人生を歩ませる

 わが子が問題児、それもかなりの問題児だと感じたら、それは類まれな才能を持っていることだと考えてほしいと、松永氏は言う。

「極端な言い方かもしれませんが、あえて言わせていただきたい。そういう子どもの親は、わが子に『幸せに生きてほしい』と思わないでください。幸せは偶然が運んでくる。運がよければ幸せになれると割り切ること。そのかわり、面白い人生を歩ませる。目の前にある面白いことをたくさんやらせて、人生はもっともっと面白くなるのだとワクワクさせてあげてください。そうすると、きっとどこかで偶然の神様が幸せを運んできてくれます」

 近い将来、人の仕事はどんどんAI(人工知能)に奪われていくといわれている。しかし、面白がって人生を歩む術を身に着けた「問題児」は、決してAIに奪われない創造的な仕事に就くだろうと、松永氏は考えている。


【著者プロフィール】
松永 暢史(まつながのぶふみ)

1957年生まれ。慶應義塾大学文学部卒。教育環境設定コンサルタント・V-net教育相談事務所主宰。多動で衝動的なADHDタイプであるために、「和を乱す問題児」として学校生活を送る。高校受験に際して、成績アップの方法を模索。一律的な教育に向かない自らの体験をふまえ、勉強のプロ・受験のプロとして、さまざまな学習法を開発し、教育コンサルタントとして講演活動、執筆活動を行っている。