「日本で一番脳に詳しいお母さん」による、子どもの脳を育む3つのポイント

ライフスタイル

2017/12/13

『母脳 母と子のための脳科学』(黒川伊保子/ポプラ社)

 母になったものたちが最も苦しめられるのは、自由な時間が持てないことでも睡眠不足でもなく、周囲から押し付けられる「母親はこうあるべき」という幻想だ。子育てに正解はないが、世の中を見渡せば、科学的根拠もない不可解な「育児の掟」が蔓延していることに気がつくだろう。

 何を信じていいのかと悩んでいる人にはぜひとも黒川伊保子さんの『母脳 母と子のための脳科学』(ポプラ社)を読んでみてほしい。この「脳科学による育児本」は、あなたを「育児の掟」から自由にしてくれるに違いない。

 黒川さんは大学卒業後の1983年、コンピュータ・メーカーに就職し、人工知能(AI)の研究開発部門に所属。1991年に、一人の男の子を授かった。当時「日本で一番脳に詳しいお母さん」だった彼女は、人工知能の開発でやっていることをそのまま育児に導入。脳科学で、育児の戦略を立ててみると、世間がつきつけてくる「育児の掟」は、ひとつの模範ではあるけれど、絶対ではないことに気づいたという。母親は自分にできること、したくないことを見極めて、自分らしい子育てをすればいいのだ。少し、黒川さんの子育て法を覗いてみよう。

■子育てに“キャンペーンコピー”をもつ

 企業のキャンペーンコピーは、社員やユーザーの動機づけのためにある。動機づけがしっかりしていれば、日々の細かいことで互いの合意が得られやすい。同様に、子育てでも、目標はことばにして掲げるといいのだそう。黒川さんの場合は、「母も惚れるいい男」を目指して息子を育てていた。このおかげで黒川さんは息子を叱る必要がほとんどなかったという。動機づけの有無で脳の対応速度は圧倒的に異なる。子にきっぱりと方向性を示すために目標設定は重要だ。

■愛はことばで伝える

 愛はことばで伝えなければ伝わらない。特に男女の脳は感性構造が違うので、異性の思いは、暗黙の了解では伝わりにくい。母は息子に、父は娘に、明確にことばで愛を伝えるといいだろう。特に13歳〜15歳までの「子ども脳」から「おとな脳」への移行期は、脳が不安と困惑の状態にある。黒川さんは、反抗期時代の息子に対しても「あなたに会えて本当によかった」と愛情をことばで伝えていたという。

■ゼロリスクの子育てはない

 脳は何かの才能を得ると、一方で、何かの可能性を失うようにできている。たとえば、英語教育。少し前までは「赤ちゃんから始めないと間に合わない」と言われていたが、今になって「外国語の早期教育を受けた子は、そうでない子に比べて理系の成績が良くない傾向にある」と言われ始めている。黒川さんは息子を理系脳に育てたかったため、日本語教育に力をいれた。しかし、理系脳には理系脳の魅力があるように、バイリンガルにはバイリンガルの魅力がある。どういう子どもに育てたいのかの正解は親の中にしかないのだ。

「母親が違和感を覚えることには耳を貸さなくていい」という黒川さんの思いに、子育てに悩む人たちは勇気づけられる。この本は、母親たちの救いの書になるに違いない。

文=アサトーミナミ