美味しさとトキメキの大ボリューム玉手箱的アンソロジー「恋テロ」「飯テロ」、2冊同時刊行!

文芸・カルチャー

公開日:2017/12/14

『恋テロ』
『飯テロ』

 いよいよ冬に突入し、寒さも本番。外に出るより家の中でゆっくり読書でも……という人にオススメなのが、富士見L文庫から初刊行されたアンソロジー『恋テロ』と『飯テロ』だ。

 富士見L文庫は、アニメ化も決定した「かくりよの宿飯」シリーズや、大ヒット中華ファンタジー「紅霞後宮物語」シリーズなどでお馴染みのキャラクター文芸レーベルだが、今回のアンソロジーは「あやかし」や「ファンタジー」というジャンルではなく、「食」と「恋愛」という切り口で20人の書き下ろしやコミックを集めた短編集となっている。宮木あや子やほしおさなえなど、富士見L文庫やキャラクター文芸ではなかなか見られない作家も参加している。

 では、その中身は……? と『恋テロ』に収録されている宮木あや子の短編「犬っぽくなかったです」は、31歳の処女が主人公というところからすでに攻めている! 突き抜けた31歳処女主人公の職場恋愛考察がおもしろい。妄想と現実と二次元と三次元とで自問自答する主人公に、「そのままのあなたでいいよ!」と言ってあげたくなる。

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 一方の『飯テロ』では、味噌汁という家庭のぬくもりを感じさせる素材を使いつつ、お仕事の女子の共感を呼ぶ短編、ほしおさなえの「味噌汁王子」に身も心もほっこりさせられる。新米美容師と先輩美容師のほのかな恋の予感を感じさせるところがまた憎い。こんな先輩ほしい!

 ショートコミックのバリエーションも豊富だ。大島千春の「解いて結んで」は倦怠期カップルの空気感を見事に描いているし、芝生かやの「お近づきのクリーム煮」は視覚からも食欲を刺激してくる。

『恋テロ』は、幼馴染みや会社の上司など様々なシチュエーションの恋物語が登場するので、自分好みのシチュエーションで想像しながら読むと、身もだえすること請け合い。
『飯テロ』は、とにかく美味しそうな食べ物描写を堪能しよう。すぐに試してみたくなる「ぐずぐず飯」なんてものまであるので、想像だけで満足できない人はキッチンへ駆け込もう。

 短編小説にイラストにショートコミックに……とまさに玉手箱のようなアンソロジー。サブタイトルのように真夜中に読むか読まないかは、自己判断でお願いします!