引きこもり歴10年の男が「イケメン」→「アイドル」に!? 『オッサン(36)がアイドルになる話』

マンガ

公開日:2017/12/19

『オッサン(36)がアイドルになる話』(もちだもちこ/主婦と生活社)

 人は中身、と思いたいが、外見で拒絶されてしまうと中身を知られることもないという現実。見た目にコンプレックスを抱いている多くの人が、悲しい思いをした経験をお持ちだろう。そしてそれは、たとえ痩せたりして脱却しても、なかなか消えない傷になる。『オッサン(36)がアイドルになる話』(もちだもちこ/主婦と生活社)の主人公・大崎弥勒、通称“ミロク”も、営業として働いていたが太っているせいでリストラ対象となり、社会から弾かれてしまった男性の1人だ。

 20代半ばでリストラという大きな挫折を味わったミロクは、心に大きな傷を負い、そこから10年間引きこもり生活を送っていた。彼の唯一の救いとなったのは、家族だけは彼を見捨てなかったこと。ミロクは傷を負いながらも、家族の愛に支えられて生きていた。

 しかしある日、そんなミロクに転機が訪れる。とある動画サイトの「踊ってみよう」にハマり、スポーツジムとカラオケに行くようになったミロクは、気づけば週5でジムに通い、すっかり引き締まった体になっていた。ミロクの家族は美形揃いで、ミロクも本来は例外ではない。今までは太っていてそれが分からなかったが、痩せた今、元々の長身もあって見る者を虜にする美男へと進化を遂げた。

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 そんな中、ミロクは1人カラオケ中に「踊ってみよう」動画を撮り、非公開にしたつもりで動画サイトにアップ――したのだが、公開設定を間違い、一般公開してしまう。長年の思い込みから本人に自覚はないが、ミロクは今や誰もが羨む美男だ。動画はあっという間に再生され、拡散されて広まり、ちょっとした有名人になってしまった。

 その後も、ジムで知り合った芸能事務所の社長・如月与一、通称“ヨイチ”に頼まれてモデルをすればファッション雑誌のトップを飾るなど、彼は次々と認められていく。そしてついに、有名プロデューサー・尾根江加茂の目に留まり、ミロクはヨイチ、そして同じくジム仲間の小野原司樹、通称“シジュ”とともにアイドル活動をすることになってしまったのだった。

 ミロクの魅力は、外見だけではない。美形に長身、キレイな肌と完璧な容姿を持ちながら、飾らない、気さくで優しい性格もまたまわりを魅了している。さらに昔から正義感が強く、近所の喫茶店で暴れていた酔っ払いから子どもたちを守ったこともある。引きこもりで気が強いわけでもない彼がそんな行動に出たのは、咄嗟のこと。思わず、というやつだ。しかし酔っ払いと戦っている間、当時ハマっていたアニメのキャラクターになりきっていたりしたせいで、人助けをしたにもかかわらず、彼にとってこれは黒歴史でもある。そんな残念さも含めて、ミロクの魅力なのだ。

 アイドルとなった3人は、それぞれの持つオーラで次々と人気を獲得していく。そんな中、ミロクのマネージャーを担当しているヨイチの姪・如月芙美、通称“フミ”とミロクの関係、ミロクの姉・大崎実羽千、通称“ミハチ”とヨイチの関係も、じわじわと進んでいく。留まるところを知らない人気の中、彼らは、彼女らは、今後どうなっていくのか。アラフォーとは思えないピュアっぷりを発揮しまくる彼らから、『オッサン(36)がアイドルになる話』から、今後も目が離せない。

文=月乃雫