2020年のセンター試験終了後、何がかわる? 親が知っておきたい教育のギモン
公開日:2017/12/22
■2020年、教育が変わる!?
先日、プレテストの結果が公表され話題となった2020年の大学入試制度改革。センター試験から「共通テスト」への切り替え前後の受験生&保護者は、心中穏やかではないだろう。そもそもどうしてこんな変更が行われるのか? 小学校での英語教育も本格導入されるし、オリンピックだけでなく2020年は「教育」に関して大きな変化が次々予想されているのだ。
もちろんそうした変更は社会と時代の変化にあわせてのこと。とはいえ、具体的に何を目指すのか、そもそもそういうお達しが下りてくる「教育」とはどんな仕組みでできているのか、疑問だらけなのに急に「変えます!」と言われても…そんな人には『モヤモヤが一気に解決! 親が知っておきたい教育の疑問31』(石井としろう/集英社)をおすすめしたい。著者の石井としろう氏は元国会議員で教育政策に関わった経験もある人物。一児の父として、さらに46歳で教壇に立った教育実習経験者として、保護者と教育現場双方の視点からみえてくる「教育の疑問」に、真正面から向き合い、とにかくわかりやすく答えてくれる。
■大学共通テストで実際どう変わる?
たとえば大学入試はどう変わるのか。これまでのセンター試験は「知識・技能」を問うものだったが、さらに「思考力・判断力・表現力」「関心・意欲・態度」を問う試験になるという。考えて表現させる記述式問題が入り、マークシートも単純な選択問題だけではなくなるため、単に「覚える」だけでは高得点はのぞめない。先日、全国約1900校でのべ18万人の高校生が受験したプレテストの結果が発表されたばかりでもあり、まだ具体的な受験対策を立てるのは難しい状況だろう。
「今回の大学入試改革は、AI時代に対応したもの。自分で問題を発見して新しいものを作るなど、人間としてのコミュニケーション能力に長けた人材が求められることのあらわれ」と著者。こうした未来図を共有し「なぜ変えるのか」を理解すると、変化にただ困惑するのではなく、前向きに捉えられるのではないだろうか。
■疑問山積の教育現場。先生はなぜ忙しい?
普段の学校生活にも疑問はつきものだ。ちょっと前は「学級崩壊」がトピック的に語られたが、最近多いのは「先生の働き過ぎ」問題。実際、2013年の調査ではOECD加盟34カ国中、最も長時間労働だったのが日本の教員だったという(他の国の1週間の平均労働時間38時間に対し、日本はなんと54時間)。授業のほかに生活指導、進路指導、トラブル対処、部活の顧問をやっていれば放課後や休日も時間をとられてしまうとあって、とにかくやることが多過ぎるのが原因だ。
この事態をどうにかしようと、近頃は「学級事務支援員」(テストの採点や守秘義務のある書類を扱う事務作業を行うスタッフ)を採用するなど、国や自治体が中心となって先生の負担を減らす取り組みが始まっている。とはいえ教職員以外の小中学校スタッフの割合は18%。アメリカは44%、イギリスは49%(2013年、文科省調べ)と比べれば、まだまだ保護者をはじめ社会のバックアップが必要なのは理解できるだろう。
このように本書で今の問題や現場の取り組み、その奥にある理念や仕組みをおさえると、あらためて教育が「身近な問題」になるはず。なかなか先が読めない時代だからこそ、きちんと「知る」ことで変化にも前向きになれるだろう。
文=荒井理恵
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