AIがいれば人間はいらない!? 人間のすべき7つの仕事

社会

公開日:2017/12/19

『人間の値打ち(集英社新書)』(鎌田實/集英社)

 映画「ブレードランナー2049」が公開され、話題になっている。ご覧になった方も多いと思うが(とはいえ未見の方のために、公式ホームページで公開されている情報にとどめておくが)、近未来を舞台にした「レプリカントと呼ばれる人造人間」と「人間」の物語だ。使い捨ての労働力として製造されたレプリカントは、見た目も行動も人間そっくりで見分けがつかない。それほどまでに進化したロボットと人間に違いや優劣はあるのか、そして人間と人工知能は共存できるのか? 非常に考えさせられる必見の名作だ。

 映画の設定は2049年だが、すでに現在も優秀なロボットが活躍しているのはご承知の通り。計算や力仕事はもとより、人間に勝つのは困難といわれていた知の極北「将棋」ですら、人間のほうが苦戦するようになった。しかし、そうなると、人間の価値って何なのだろう…?

 そんな深すぎる疑問によりそってくれるのが、本書『人間の値打ち(集英社新書)』(鎌田實/集英社)。著者は実の親に捨てられ、養父母のもとで育った。貧しい境遇から医師になり、現在は名誉院長や大学教授をする傍らチェルノブイリやイラクの支援を行い、日本の地域医療にも貢献している。世界を巡り、病人や難民と語り合った末に辿り着いた究極の人間観とは? 人間の生きる意味とは?

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■人間の値打ちを決める「7つの要素」

 著者はさまざまなエピソードを紹介した上で、人間の価値を支えるのは以下の7つではないかという。

1つ目は「空気に流されない生き方」ができること。社会や組織に貢献しつつも、盲従せずに真実を見つめ、時には声をあげ行動する。自分や他人の尊厳を守る勇気がある。

2つ目は「人生を楽しむ力」。遊び心、ファンキー、自由、自己決定! 人間はどこまでも自由で、個性豊か。困難すら楽しめるパワーがある。ちなみに著者はこの力を最も大切にしているらしい。

3つ目は「愛と死」を慈しむ。結婚していようがいまいが、愛するための共感力、愛を持続する包容力を育てたい。同時に、どう死ぬかにも思いを馳せよう。

4つ目は「破壊力」。壁を壊す力。生きていれば壁にぶつかることもあるが、強い決断力や持続力、そして勇気という「破壊力」があれば大丈夫。壁を壊すだけでなく、迂回したり飛び越えたりという知恵や洞察力も大事。

5つ目は「稼ぐ力」。きれいごとで生きては行けない。お金は大事だ。

6つ目は「別解力」。正解は1つとは限らない。1つの価値観に縛られず生き、他人と比べないこと。同時に他人が違うことをしていても、それに寛容になること

7つ目は「孤独を怖がらない力」。死や孤独を恐れなくなると、生が輝く。

 これらを完璧に備えた人はおらず、著者も途上だという。老人でも、重い障がいがあっても自分のペースで取り組むことができ、始めるのに遅すぎることはない。今のところ、ロボットは「心を育て、磨く」のは得意ではない模様。上記は人間だからできる7つ仕事、ともいえる。

文=青柳寧子