「愛着スタイル」の違いが夫婦の関係を壊す? 精神科医の目線から根本的な原因を探る!

恋愛・結婚

更新日:2017/12/21

『夫婦という病 夫を愛せない妻たち』(岡田尊司/河出書房新社)

『夫婦という病 夫を愛せない妻たち』(岡田尊司/河出書房新社)は、精神科医の著者による「医師」目線からの夫婦関係の問題点や、修復方法を、実際の事例を元にまとめている1冊だ。

「夫を愛せない妻」たちは、なぜ一度は伴侶と認めた相手を、嫌悪するようになってしまうのだろうか。

 当事者に尋ねると大抵の場合、「それは夫に○○(DV/モラハラ/セクハラetc.)されたかたら」と、夫の態度や過去の出来事などを持ち出し、夫を「悪者」にしてしまう。

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 もちろん、それは間違いではないのだろうが、案外、そうなってしまう理由は「自分」にもあったりする。そのことを自覚しない限り、たとえ夫を交換したとしても根本的な解決にはならず、「せっかく暴力夫と別れたのに、再婚相手がまた同じタイプ」だった、ということも。そうならないために、自分への理解を深めることも大切なのだ。

 本書によると「愛着スタイル」というものがあり、夫婦の「すれ違い」の根底に潜んでいる問題はこの愛着スタイルが原因である場合も多いという。

「愛着」は、夫婦を結びつける「絆」を支えているもの。生物学的に説明すると、オキシトシンというホルモンによって結びつきが深められており、極端に言えばこれがなくなれば、相手に対する愛情も薄れてしまうのである。

 このオキシトシンにより生じる「愛着」のカタチは、生まれ育った環境や経験により、4パータンに分けられる。

(1)「安定-回避型」
(2)「安定-不安型」
(3)「不安定-回避型」
(4)「不安定-不安型」

(1)と(2)の「安定」は愛情のある家庭で育ち、オキシトシンの仕組みがよく発達し、「愛着」が安定しているタイプ。思いやりがあり優しく、不安やストレスを感じにくくなる。持続的な愛着が維持されやすく、同じパートナーと良好な関係を続けようとする。

 その中の「回避型」は、あまりベタベタした関係を好まない。情緒的な交わりや相手の気持ちを汲むことが苦手で、パートナーは物足りなさを感じやすい。相手から助けを求められるとうっとうしがる。それによってパートナーを失望させやすいが、相手に対して悪意があるわけではなく、自己保身のためなので、攻撃的にはなりにくい。

「不安型」は、たとえ不満があってもひとりの人を愛し続けようとする。自分に自信がなく、ひとりでは生きていけないと考えがちで、不当な仕打ちをされても耐える。相手をじくじく責めたり、陰で悪口を言ったりしても、本気で裏切るようなことは中々できない。

(3)、(4)の「不安定」は愛情の乏しい家庭で育ち、愛着の仕組みがうまく発達しなかったタイプ。パートナーと継続的な家庭を築くことや、子育てを困難にする。優しさや思いやりに欠けたり、過度に厳密だったり、相手の気持ちに無頓着だったりする。不安やストレスを感じやすい。

 その中の「回避型」はひとりのパートナーに執着しない。誰に対しても心からの信頼や絆を持とうとしない。異性に対する関心は征服欲やプライドを満たすためだったり、性的な快楽のためだったりする。相手に対して無関心でありながら、嫉妬心が強くパートナーを所有物のように扱い、思い通りにならないと攻撃的になることも。

「不安型」は、常に自分を一番に考えてくれる存在を自分本位に消費していく。自分が満足できないと問題行動を起こしてパートナーの関心を得ようとする。常に恋愛初期のような愛情をもらえないと不安定になるため、新たに刺激と関心を与えてくれる存在を求めようとし、周期的に激しい恋をしては、別離を繰り返す。

 ひとりの異性に縛り付けておくことは難しく、お互いに不幸な結果を生みやすい。支えてくれる複数の異性を必要とする。

 あなたや、あなたの夫は、どの愛着スタイルが当てはまるだろうか? 本書では、こういった愛着スタイルの違いから夫婦関係を考えていき、根本的な夫婦関係悪化の原因や、解決策を提示してくれている。自分の愛着スタイルを知ることにより、自身を省みることもでき、また、夫との愛着の違いを知れば「対応策」も講じられる。

 夫が何を考えているか分からない「謎の生物」でなくなれば、前向きに考えていくためのきっかけになるはずだ。

「私の夫、『不安定の不安型』だ…! どうしたらいいの!?」と思った方も落ち込むことはない。愛着スタイルは変化することもあるそうだ。実際に、この愛着スタイルの夫を持ったけれど、関係を良好に継続している夫婦の事例も出てくる。

 ちなみに、この「愛着」を生むオキシトシンなるホルモンによって、夫婦のセックスレス問題も「説明」できる場合もあるとか。原因が分かれば、解決策も考えやすいだろう。こちらに興味のある方も、ぜひ読んでいただきたい。

文=雨野裾