英語を話せるようになりたい! でも、勉強の仕方がわからないという人に

暮らし

公開日:2017/12/22

『純ジャパニーズの迷わない英語勉強法』(上乃久子/小学館)

 私は英語が苦手だ。高校3年生の夏まで「I like~」はlikeに“s”が付かないが、主語がHeになれば“s”が付くという三単現のSを知らなかった。高校3年生の冬に受験したセンター試験の英語は、200点満点中60点というレベル。「グローバルな仕事をするわけでもないし、死ぬまで日本に住み続ける。英語なんて必要ない!」という負け惜しみが口癖だった。

 あれから干支が一周し、世の中は変化している。そんな変化の一つが、日本にやってくる外国人が多くなったこと。東京の街を歩けば「Please tell me the way to ○○?」などと外国人に道を尋ねられるように。「Pardon?」と何度も聞き返しては、知っている単語を並べ、なんとか道案内の使命を果たす。そんな機会が何度もあれば、英語が苦手だと自負する私でも「スラスラ英語が話せるようになりたい!」と心変わりするものだ。

 とはいえ、どう勉強すればよいかわからない。CDから流れてくる英語をただ聞き流すだけでいいのか、駅前留学をすればよいのか。はたまた駅前ではなく、英語圏の国へ留学すればよいのか。

advertisement

 そんな疑問に答えてくれる一冊が『純ジャパニーズの迷わない英語勉強法』(上乃久子/小学館)だ。書名にもなっている“純ジャパニーズ”とは「留学、海外生活経験なし。日本の学校で英語を学んだ人」のこと。純ジャパニーズながら、ニューヨークタイムズの記者として活躍する著者・上乃久子氏の勉強法が、スピーキング・リスニング・グラマーなど全8章に分けられ紹介されている。

 日本人は単語を覚える、構文を覚える、黙々と英文読解に励むといった「インプット」に勤しむ傾向があり、もっとスピーキングやライティングなどの「アウトプット」を意識することがカギ、と本書の初めに語る上乃氏。

 確かに海外で生活をしていて、話すことができなければ生きていけない。そこで自然とアウトプットの力が養われるのだろう。しかし、日本では英語が話せずとも生活できる。アウトプットが必要ない日本で「自分の気持ちを英語で伝えたい」というモチベーションを保ち続けること。これは英語をマスターするうえで欠かせないようだ。

 また「多少リスニングができなくても、繰り返し聞くことで何とか会話を進めることができる」という。そのため、初めはスピーキングの章からスタートとなる。具体的な勉強方法として、「50個の英文を毎日音読する」「身の回りの情景を英語で実況する」などを挙げ、フレーズが咄嗟に出るレベルまで繰り返すことが大切とのことだ。

 本書で非常に納得させられたのは、英文の選び方だ。書店で購入するテキストには日常的な会話が含まれているが、自分が使うかどうかわからない会話の例文なども収録されている。そのような明かに使用頻度が少ないものではなく、自分が身の回りで使う言葉を英語にするといいそうだ。確かに自分が英語を使っている様子をイメージしやすいため、モチベーションアップにつながりやすいだろう。

 上乃氏は「英語は『木桶』のようなもの。スピーキングやリーディングなどの技能は木桶でいうと『側板』に当たります。(中略)たくさんの水を貯えようと思えば、1枚1枚の側板の寸法を長くしなければいけません」と述べている。つまり、純ジャパニーズの弱点であるアウトプットを伸ばしつつ、インプットにも目を向けていかなければいけないということ。英語習得に近道などはなく、地道にそれぞれの力を向上させる必要があるようだ。

 本書は全体を通して、最低でも中学英語が身についている、もしくは高校英語レベルが理解できる方に向いているように感じた。英語が苦手という方はまず、簡単に中学英語をおさらいしてから本書を利用してほしい。小さな一歩かもしれないが、その一歩が外国人と自由にコミュニケーションが取れる未来につながるはずだ。

文=冴島友貴