これで「家事は苦行」から解放! シンプルにして楽しいコツ2つ

暮らし

更新日:2018/1/15

『忙しくても家事を楽しむ小さな工夫』(田中千恵/KADOKAWA)

 一人暮らしをはじめた時、それがたとえワンルームでも、家事ってけっこう面倒くさいと思ったものだ。実家で何もしなかったわけではないのだが、毎日の料理に洗濯、早朝「しか」不可のゴミ出し、いつの間にか積もる埃やシンクの水垢などの何だか気になるもの…。休日の大半が家事でつぶれるのも辛かった。

 実家を出て早20年、手際の悪さは相変わらずにして家事を「楽に早く済ませたい」思いはつのるばかりだが、そんな時手に取ったのが本書『忙しくても家事を楽しむ小さな工夫』(田中千恵/KADOKAWA)。

 夫と子ども3人、犬と暮らす著者は、仕事をしつつ家事のほぼすべてを担当している。近居の父の介護もする。それで家事を楽しんでいるというのだから「とても真似できません」と思う方もいらっしゃるかもしれないが、著者は24時間のうち5時間は睡眠、9時間は仕事をしている。残りの10時間をどう工夫しているのか、そのコツを盗んでみよう。

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■先を見越した「仕込み」と「美意識」がゆとりを生む

「忙しくても…」というタイトルではあるが、本書は時短術を紹介しているわけではない。家族と食卓をともにする、子どもの塾の送り迎え、犬の写真をとったりお茶を飲んだり…そんな何気ないけれどほっとする時間はしっかり確保されている。一体どうやって余裕を生み出すのか?

 コツの第1は場当たり的な家事をしないこと。先を見越した「仕込み」を随所にほどこすことで、結果的に無駄な時間を省いていく。

 たとえば早朝の1時間で「お茶を飲む、お花の水替え、夜洗ったふきんをカウンターにセット、朝ご飯とお弁当の準備」を済ませているが、これは作り置きした茹で野菜、浅漬け、常備菜、だしがあるから。これらを空いた時間に少しずつ仕込んでおき、冷蔵・冷凍保存してある。朝はちょっと火を通すだけ。ご飯は土鍋を使うと炊飯器より早く美味しく炊きあがる。

 コツの第2は美意識を磨くこと。まず真似できるのは器の使い方だろうか。気に入ったお皿、カップなどを使うことで、普段の料理が驚くほど美味しそうになる。ワンプレート料理でも、器の力は絶大。器や花器としてはもちろん、収納にもなるかごの使い方も参考になる。

 著者は雑貨店店主であり、物に思い入れもあるのだろう、持ち物は決して少なくない。とはいえ部屋にあるのは厳選されたお気に入りばかりで、それらを整える時間もまた楽しみになっているようだ。

 好きなものと暮らせば、美意識が満ち足りてストレスが減る。選び抜くことで無駄な買い物もせず節約になる。まったく押しつけがましくないが、時間との付き合い方、ものとの向き合い方、真似したい技の数々が詰まった1冊だ。

文=青柳寧子