その手が選ぶのは、現在か、それとも過去か――。エンタメ小説の俊英、瀬尾つかさ最新作『いつかのクリスマスの日、きみは時の果てに消えて』は学園青春小説×時間SFの快作!

文芸・カルチャー

2017/12/21

『いつかクリスマスの日、きみは時の果てに消えて』(著:瀬尾つかさ、イラスト:椎名優/KADOKAWA)

 失われてしまったものを取り戻せる可能性があると知ったとき、人はどうするだろうか。わずかでもすがれる希望があるなら、すべてを賭けてその可能性に挑むだろうか。そこに大きなリスクがあると分かっても、諦めずに挑めるだろうか――? そういった問いを読者に発する物語は古今多い。「トロッコ問題」のような倫理的思考実験とまでいかなくとも、「選択」を突きつけられたとき、読者は自分ならば一体どうするのかと問いながらページをめくることも多いだろう。この『いつかクリスマスの日、きみは時の果てに消えて』も、そうした自問をすることになる作品かもしれない。

 本作の主人公、高校二年生の梶谷悠太が暮らす街は五年前、大きな災厄によって街の半分と、少なくない人の命が奪われた過去を持つ。その災厄の日、彼の身体に住みついた不思議な生物のことを隠しながら、悠太はとりたてて代わり映えのない日々を送っていた。
 だが、一人の少女によって状況は一変する。

 三嶋恵。ほとんど口を利いたこともなかった同じクラスのソフトボール部のエースは、悠太と同じ不思議な生物を体内に住まわせていたのだ。


 そして、誰にも言えない共通の秘密を抱えたふたりはあることに気づく。その不思議な生物、ニムエが二匹そろうと、過去に飛ぶことが出来るのだ。かつての災厄で命を落とした少女、加賀玖瑠美がまだ行きていた五年前の世界へと――。


 本作は、デビュー以来おもにSFやファンタジーを中心にコンスタントに作品を刊行してきた瀬尾つかさによる、いわゆる時間SFの系譜に連なる青春小説だ。ライトノベルをメインステージにする著者らしく、会話を中心としたテンポの良い話運びに、「過去を変えることでおこるタイムパラドクス」「有り様の違いすぎる知的生物同士の交流」というSF的なテーマも纏わせた、少年と少女が織りなすど真ん中直球な青春恋愛小説に仕上がっている。
 過去を変えることによって、恵と親友だったという玖瑠美を、そして街を災厄から救えるのではないか。同じ秘密と、同じ目的をもった悠太と恵は、やがて恋人同士となる。だが、どこか幼いふたりの不器用な恋愛ぶりにニヤニヤするやら気恥ずかしいやらと読み進めていくうちに、物語がふたりのまえに思わぬ落とし穴を用意している事に気づき慄然とするのだ。


 悠太に突きつけられる大いなる選択。それは、どちらにせよ大きな喪失が待っている選択だ。その中で、彼が何を考え、どんな道を選ぶのか――。それは、あなたに対する問いでもある。
 すこしひねりの効いた青春恋愛小説をお求めなら、本作はぜひおすすめの作品だ。