シャアの「若さゆえの過ち」とは何だったのか…?「アニメ」のすごさをもっと深く考察し、語ってみよう

アニメ・マンガ

2017/12/29

『大人の教養として知りたい すごすぎる日本のアニメ』(岡田斗司夫/KADOKAWA)

 現在、新作のテレビアニメは週に50本以上放送され、その時間帯は深夜にまで及ぶ。劇場アニメ作品も多く上映され、興行収入ランキングで上位に入ることも珍しくなく、まさに「アニメ大国ニッポン」という感じである。しかし国内の一般的なアニメの評価としては、まだまだ「オタクの嗜好品」の枠を出ていない印象。これはおそらく、アニメを「一般教養」として人々が捉えていないためであろう。「ジャパニメーション」として世界に存在を誇示しようとしつつも、一方ではいまだ「低俗なまんが映画」的な意識も根強く、非常に歪な構造となっているのだ。では今後、どうすればよいのか。12月28日(木)に電子書籍が配信された『大人の教養として知りたい すごすぎる日本のアニメ』(岡田斗司夫/KADOKAWA)は、人々がもっと一般教養としてアニメを語るようになればよいと説く。

 著者の岡田斗司夫氏は『ふしぎの海のナディア』や『新世紀エヴァンゲリオン』などの名作を生み出したアニメ制作会社「ガイナックス」の初代社長を務めた人物。退社後も自身を「オタキング」と称し、さまざまなメディアで「アニメコンテンツ」の地位向上を訴えてきた。本書は著者が「ニコニコ生放送」で語ったことをベースにしており、メジャーな作品を題材にして、いかにアニメを「語る」べきかを述べている。

 とはいえ、いきなりアニメを語るといっても「どうすればよいのか分からない」という向きがほとんどのはず。そこで本書では著名な作品や作家に焦点をあて、著者が自らの考えを披露する形式を採用。「この本を読み終わった人は『アニメ通』になっているに違いありません」として、アニメを語ることがどういうことかを実証している。扱う作品も『君の名は。』や『機動戦士ガンダム』など超有名なタイトルばかりであり、すぐに会話のネタとして使えるものが揃っているのは嬉しいところだ。

 ではどのようなことが語られているのか。ここでは第4章で触れられる『ガンダム』を見てみたい。この作品に対する著者の評価は非常に高く「テレビシリーズの『機動戦士ガンダム』はテレビ版アニメとして、僕の中では最高点です」と大絶賛。ちなみに同作品は現在まで多くのシリーズが製作されており、著者が挙げているのはいわゆる「ファーストガンダム」(以後「ファースト」)と呼ばれる一番初めに放送されたものである。本書では『ガンダム』を「緻密な演出で構成された、優れたSF作品」と紹介し、具体的な評価点を「ファースト」の第1話を例に解説している。

 著者の評価は多岐にわたり、人物の描写から戦闘の演出など、非常に細かい部分まで論評。その中で特に面白かったのが、第1話でジオン公国の軍人「シャア・アズナブル」が発する「認めたくないものだな。自分自身の、若さゆえの過ちというものを」という有名なセリフの解釈である。単にシャアの「カッコイイ言葉」としか認識していない人も多そうではあるが、著者はしっかりそれを考察。シャアは若くして戦功を挙げ、20歳にして少佐の地位にまでなった。それが若い部下の「手柄を立ててしまえばこっちのもの」という考えを生み出してしまったのだ。結果として偵察から戦端は開かれ、シャアは大きな流れに飲み込まれていく。つまり著者は、シャアが若い部下の暴発を読みきれず、自らの経験不足をあらわにしてしまったことを自嘲したものが先のセリフなのだと理解しているのだ。

 本書ではこういった著者の解釈が細かく述べられている。しかしこれはあくまで著者の考えであり、それをそのまま語れといっているのではない。こういう考えかたもあるのだということを参考に、自ら考察することが重要なのだ。アニメを単に「観る」だけではなく、分析の対象として「考察する」こと。これがアニメをより楽しむための方法論であり、著者のいう「教養」へと繋がっていくのだろうと思える。

文=木谷誠