「Dinks(共働き/子どもなし)、できれば別居」が希望条件――オタク営業女子の婚活奮闘マンガ『合理的な婚活』

恋愛・結婚

更新日:2018/1/22

『合理的な婚活~DINKsを本気で目指すおたくの実録婚活漫画~』(横嶋じゃのめ/集英社)

『合理的な婚活~DINKsを本気で目指すおたくの実録婚活漫画~』(横嶋じゃのめ/集英社)は、巷にあふれる「私は○○という方法で成功して、ステキな旦那様をゲットしました!」的な婚活コミックエッセイではない。「ずっと信頼し合えるパートナー」を、ちょっと特別な条件のもとに探している、BL大好きなオタク営業女子の婚活奮闘マンガである。

 まず、どうして著者の横嶋じゃのめさんが「DINKs」(共働き/子どもなし)を求めているのか。「経済的に自立したい」「所帯じみたくない」「子どもはいらない」「なんなら別居でもいい」……そうだが、こうなると「別に結婚しなくていいのでは?」という疑問が湧いてくる。

 横嶋さんは親しいたった一人の肉親である母親が重い病気にかかったことで、「天涯孤独になるかも」という不安に直面したことや、「大好きで尊敬できる1人の人をパートナーと決めたい」という想いがあり、「DINKsで別居」という条件に合う人を探しているそうだ。

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 別居は絶対条件ではないそうだが、「部屋の片付けするしないとかの理由で嫌いになりたくない」という気持ちもあるとか。それはちょっと……分かるぞ……。

 ……というわけで、マッチングアプリで相手を探し、「それでもいい!」という多くの男性と会い、結婚相手を探す様子が描かれている。

 結局ラストまで成婚はしないので、婚活の参考にはならないかもしれないが、女性にとっては共感できるネタも多々あり、著者のオリジナリティあふれる視点から見た婚活相手の「分析」がクセになる一冊ではないだろうか。「婚活本」というか「人間観察本」のような気もする。

 敢えて機会を作らなければ、これほど年齢も職業もタイプも異なる男性と会うことはないので、「世の中にはこういう人もいるんだ~」というのが、純粋に面白く読めた。

 またお相手だけでなく、横嶋さんは「自分の分析」もする。自分が本当に求めているのはどんな人なのか。そもそも、本当にパートナーは必要なのか。……色々と考えた結果、「そんな夢みたいな男いねーよ!!」「そら見つからんわ」と落胆したり。

 横嶋さんは男っぽい思考の持ち主であり、「営業楽しい! 仕事大好き!!」というバリバリのキャリアでもあるので、いわゆる「守ってあげたくなるような女の子のかわいらしさ」みたいなものがなく、こういった特殊な条件のもと、論理的に結婚を語るため「ドライだね」「ゆがんでる」等々、「頭でっかちで、愛情の薄い人」的な見方をされることも多いようだ。だが私はむしろ「愛を信じ過ぎているがゆえの厳格さ」のように感じられた。

 作中でも述べられているように、「愛とは美しいもので、人を尊敬して深く愛せば正しい方に自然と導かれるのだ」というのが横嶋さんの「愛」への考え方(BLによって深まった「愛への信仰」らしい。それもちょっと……分かるぞ……)。

 愛を信じつつ、合理的な婚活をしている横嶋さん……成婚エピソードも読みたいので、今後も追っていきたい。従来の婚活本に飽きてしまった女性に読んでもらいたい、ちょっと変わった視点のコミックエッセイである。

文=雨野裾