うんこの漢字ドリルから94歳・佐藤愛子まで! トーハン・日販しらべ2017年 年間ベストセラーまとめ

社会

2017/12/28

 一年を振り返るコンテンツが増えると年の瀬を感じる。有名なところでは、日本漢字能力検定協会のキャンペーンで毎年発表される“今年の漢字”や、自由国民社がユーキャンと提携して発表している“新語・流行語大賞”だろう。後者で、2017年にノミネートされた「うんこ漢字ドリル」は、まさに2017年の出版業界を代表する一冊と言っていいだろう。他にも多くの作品が出版されたわけだが、どんな本がベストセラーとなったのだろうか。今回は、出版物取次大手である株式会社トーハン(以下、トーハン)と日本出版販売株式会社(以下、日販)の二社が公表している年間ベストセラーランキングの作品の中から上位の作品を紹介したい。

▼90歳の著者が抱くウツウツとした感情が人間っぽいエッセイ

『九十歳。何がめでたい』(佐藤愛子/小学館)

 今年、トーハンと日販の両方でNo.1ベストセラーに輝いたのが、『九十歳。何がめでたい』(小学館)だ。本作は、『女性セブン』(小学館)で隔週連載されたエッセイを1冊にまとめたもの。著者の佐藤愛子さんは、90歳を超えてからも長生きをされているが、88歳で長編小説『晩鐘』を書き上げてからはのんびりと暮らしていた。しかし、周りの友達らに先立たれたりで人付き合いも減ってウツウツと感じるものがあった時、たまたまきたのが本作の元になるエッセイの執筆依頼だったとか。

 そのせいか、“ブランクで錆びついた頭を動かす目的”に加えて“ウツウツとした気分”で書いてしまったせいか、半ばヤケクソになってしまったという。至るところに怒りや嘆きがつまっていて『九十歳。何がめでたい』のタイトルの通りで捻くれているようにも受け止められるが、人生の大先輩の言葉や考えがつまった本作はありがたく、めでたい一冊だ。
(※現在佐藤愛子さんは94歳)

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佐藤愛子がヤケクソで書き上げたエッセイ集には90年間生きた人だけが得られる「人生」がつまっていた!

▼残念な進化をとげた生き物たちは大人もクスッと笑ってしまう

『おもしろい! 進化のふしぎ ざんねんないきもの事典』(今泉忠明/高橋書店)

 続いては、日販の年間ベストセラー第2位に輝いた『おもしろい! 進化のふしぎ ざんねんないきもの事典』(高橋書店)を紹介したい。地球上に存在する400万種ほどの生き物たちの中から、「どうしてそうなった!?」と思わずツッコミを入れたくなるざんねんな生き物の進化に着目した一冊だ。

 例えば、シロクマの地肌は黒くて毛も透明だから本当の意味での“シロ”クマは存在しないや、ワニは噛む力はすごいが口を開ける力は実はおじいさんの握力にも及ばない、可愛い昆虫として市民権を得ているテントウムシは実はむちゃくちゃ不味いなど、クスッと笑ってしまうものばかり。シンプルなイラストで子供にもウケそうだが、シュールな笑いのつまった本作が大人の支持を得たのも納得だろう。

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「ホッキョクグマの毛がぬけると、肌は黒い」―ウソでしょ!? とんでもなく残念な進化の事典!!

▼構想12年・取材11年・執筆7年で完成した直木賞受賞の大作

『蜜蜂と遠雷』(恩田陸/幻冬舎)

 そして、日販とトーハンの両方のランキングで第3位に輝いたのが、恩田陸の『蜜蜂と遠雷』(幻冬舎)だ。“芳ヶ江を制した者は世界最高峰のS国際ピアノコンクールで優勝する”というジンクスがある、3年ごとに開催の“芳ヶ江国際ピアノコンクール”が物語の舞台。家にピアノすらない家庭の子、楽器店勤務の音大出身サラリーマン、CDデビューを果たすも母親の死以来ピアノが引けなくなった元天才少女、優勝候補の大本命と目される名門音大生など、家庭環境や境遇のことなる若者が繰り広げる競争を描く。

 注目すべきは内容だけではない。構想12年・取材11年・執筆7年という制作期間の長さにも注目が集まった。担当編集者のコメントも公開されているが、4度にもわたった浜松国際ピアノコンクールへの取材は、単純にピアノの演奏を聴くだけの単調なものだったとか。もともとクラシック音楽好きの人間が編集者だったことが功を奏したこともあり、第156回「直木三十五賞」を受賞した本作が出来上がった。

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構想12年、取材11年、執筆7年! 直木賞受賞作、恩田陸『蜜蜂と遠雷』大型重版で累計発行部数27万部に!

▼メディアで話題をさらった「うんこ」の学習書

『うんこ漢字ドリル』(文響社)

 最後は、多くのメディアでもとりあげられた話題の『うんこかん字ドリル』(文響社)を紹介しよう。日販のランキングでは4位、トーハンのでは6位にもランクインしている本作は、すべての例文に「うんこ」の語が入った学習書であり、SNS上で人気に火がついて発売2週間でシリーズ累計63万部を突破する快挙を見せた。冒頭にも書いたが、2017年の新語・流行語にもノミネートされる人気を博した一冊だ。

 出オチのようなコンセプトではあるが、内容にも努力とこだわりを感じる。まず「うんこ」が登場するシチュエーションをよくもこんなに考えたものであり、“全例文でうんこの使用に成功!”とスタッフが表紙で謳いたく気持ちもわかる。「お父さんが草原にうんこをばらまいている」という低学年向けの例文と、「幼児たちが、先生のくつにうんこを入れて遊んでいる」という高学年向けの例文を見比べてもわかるように、学年に合わせた学習内容をしっかり意識していることにも注目したい。そんな声に出して読みたくなる爆笑の例文は、子供のみならず、大人の人にもおすすめだ。

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「うんこをつまんでごらん」例文すべてに「うんこ」が入った漢字ドリル、発売2週間で63万部突破!!

 様々な本が2017年も出版され、ダ・ヴィンチニュースでも多くの記事でそれらの良さや著者の思いを伝えてきた。2018年はどういった作品が世に出て、またどういった人が書き手として脚光を浴びるのか。2018年も出版業界が盛り上がることを祈念したい。

文=田中利知(ネイビープロジェクト)