『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』『イノセンス』、世界が認める巨匠、押井守が考える7つの幸福論

人間関係

2018/1/8

『ひとまず、信じない』(押井守/中央公論新社)

 インターネットの普及により、社会のありようは大きく変化した。加えて今後は、AI(人工知能)が私たちの暮らしに大きく関わってくるだろう。AIが人間の仕事の大部分を奪ってしまうという予測もある。そうなった世界は、人間が仕事をしなくても豊かに暮らしていけるユートピアなのか、それとも人間がAIに使われるデストピアなのか。

 このような現代における幸福を、「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」や「イノセンス」など、世界が認める映画監督である押井守が論じたのが「ひとまず、信じない」(押井守/中央公論新社)である。

■幸福=優先順位という考え方

 幸福になれそうな条件を挙げていけばキリがない。お金、時間、パートナー…。 これらの中から何を「優先して」選ぶか、つまり、優先順位をつけることが、幸福や人生において最も重要である、と押井氏は考える。

それゆえに、もしあなたが映画監督で、スタッフに「良い映画を撮るための条件は?」と尋ねた時に、「良い原作があって、良い脚本があって、良い監督がいて、良いキャスティングができて、良いスタッフがいて、良い宣伝ができたら、良い映画ができます」こんな答えが返ってきたら、ためらわずにそのスタッフをクビにした方がよい。なぜなら、こんなことは誰にでも言える、当たり前のことだからだ。

 どんな映画の現場であっても、必ず制約はある。大事なのは、映画を作る上で、自分は何が最も重要だと思うのか、どれを優先すべきだと思っているのか、ということに他ならない。そしてその順位が、その人の価値観であり、個性であるのだ。

■「可能性を殺している」人たち

何も持たないことが自由だと勘違いしている人たちがいる。結婚したり、子供を持ったり、会社で役職に就いたりすると、面倒を抱えることになる。だからそんなものはない方が自由だという理屈である。しかし、その考えが正しいとは到底思えない

 私たちに自由が必要なのは、何かを実現するために、自由が必要だからである。つまり、逆に言えば、自由とは何かのための手段以上のものではない。

若い人は特にこのあたりに躓く。老人にはない「可能性」を秘めていることが自分の価値だと誤解しているために、つまり、どんな人生でも「自由」に選べるという「可能性」が自分の価値だと思うために、いつまでも自分の「可能性」だけを留保したいと思う。

 しかし、可能性を留保するということは、いつまでも選択しないということであり、それは「可能性がない」ということだ。可能性を持ち続けることは、「可能性を殺すこと」のなのである。

「『可能性』は選択して初めて『可能性』となる。『自由』は何かを背負って初めて『自由』となる。それぞれの言葉の持つ逆の行動が、その言葉に初めて価値を与える。きれいな虹は遠くから見るからこそ美しく輝くのであって、近づいて見ようとすると見えなくなる。それと同じで、『可能性』や『自由』を価値のあるものにするためには、それらを追い求めてはいけないのである」

 本書では、幸福について、他にも「男と女」「愛」「真実と虚構とは」などの観点からも深く論じられており、読者の方々それぞれが、それぞれの幸福について考えるのに、有益な1冊となるはずだ。

文=kisanuki