父、貴乃花は永遠のヒーロー。生粋(キッスイ)の生粋(ナマイキ)な男・花田優一が生き様を語る

小説・エッセイ

2018/1/2

『生粋(ナマイキ)』(花田優一/主婦と生活社)

・仕事より、プライベート重視。
・勝ち負け付けず、みんな横並び。
・「欲」も「熱」もなく醒めている。
・恋愛に一所懸命にならない。
・無理をしない。

 これらは、ゆとり世代、さとり世代、つくし世代と呼ばれる「最近の若者たち」に見られる特徴なのだそうだ。

「まったく、最近の若いモンは…」

 いつの時代も年長者たちは不満そうだが、今の若者が生まれ育ってきた環境は、その前の世代とだいぶ違う。企業の倒産が相次ぎ、リストラ、雇止めなど、「年功序列、終身雇用」を謳っていた日本の雇用のシステムが根幹から崩壊した時代である。

 自分の親がそんな目にあえば、進学の断念など大きな影響を受けた人もいただろう。また、大規模な自然災害も頻発し、世の中全体が“何が起こるかわからない”と考えるようになった。そんな不安定な時代に育った若者たちは、「もしも」のときのために無駄遣いをしなくなり、地味でも安定したものを求めるようになる。

 そんな世代ど真ん中の若者が本を書いた。『生粋(ナマイキ)』(花田優一/主婦と生活社)は、いわずとしれた平成の大横綱、貴乃花を父に持つ著者が、「生きる哲学」、「仕事の流儀」、「男の背中」と章立てして、自らの生き様について語る。

■「横綱の息子」から「ひとりの人間」へ

 15歳、中学卒業とともに海外に渡り、ひとりで生活を始めて「靴職人」になることを目指した。祖父、父とは全く異なる道を選び、横綱の息子として守られていた環境からいっきに、誰も自分を知らない世界へと身を投じた。一人前になりたい、そんな思いがあった。

この世で「憧れの男」は当時もいまもただひとり、父だけだ。
僕にとって永遠のヒーローだ。

 本書には、著者の「靴職人」としての仕事場風景の写真が載せられている。作業中の著者の横には大きく引き伸ばされた父、貴乃花の土俵入りの写真が著者の仕事ぶりを見守る。

■「触れられるおっぱいより、触れられないおっぱい」

例えば、到底触れることも、話すことさえもできないような女性に惚れてしまったとしよう。
 でも、早々に「自分には無理だ」と決めつけて見て見ないふりをして、自分のコミュニティの中にいる女性―「触れられそうなおっぱい」で自分の気持ちを落ち着かせようとするのは、どちらの女性に対しても失礼だ。(中略)
 でも僕は、これまでずっと真剣に、いつも全力で、「触れられないおっぱい」にチャレンジし続けてきたという自負がある。

 頂点を目指して突き進む。失敗すらも「成功までの途中経過」、「成功しない方法を見つけた」というひとつの成功だという。

 父の偉大さに委縮しない心意気はまさに、生粋(キッスイ)の生粋(ナマイキ)、タイトル通りの男のダンディズムを感じる。「自分がやりたいことが見つからない」、「失敗するのが怖い」、そんな考えの若者たちがいたら、背中を押してくれる1冊となってほしい。

文=銀 璃子