堺雅人と高畑充希が主演で話題の映画『DESTINY鎌倉ものがたり』! 原作エピソードを知れば映画がもっと楽しくなる!

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公開日:2017/12/29

『鎌倉ものがたり 映画「DESTINY鎌倉ものがたり」原作エピソード集(上・下)』(西岸良平/双葉社)

 2017年12月9日より公開中の映画『DESTINY鎌倉ものがたり』は、主演を堺雅人と高畑充希の実力派俳優が務めるなど話題を呼んでいる。監督は映画『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズで大ヒットを飛ばした山崎貴氏。そしてこの山崎監督作品にはいずれも原作が存在する。それは漫画であり、作者は共に「西岸良平」氏だ。

 山崎監督が敬愛するという西岸氏の原作版『鎌倉ものがたり』は、1982年に連載が始まり現在も続いている長寿作品である。現在、コミックスは34巻まで刊行されているが、今回の映画化に際してはさまざまなエピソードをベースにひとつのストーリーを描き出している。そして『鎌倉ものがたり 映画「DESTINY鎌倉ものがたり」原作エピソード集』(西岸良平/双葉社)として、映画のベースとなったエピソード群がコミックスにまとめられた。

 簡単に作品の概要を説明すると、鎌倉在住の主人公・一色正和は推理小説などミステリーものを手がける小説家。そんな彼のもとへ、出版社のアルバイトとして訪れたのが中村亜紀子だった。年の差12歳など多少の問題はあったが、ふたりは晴れて夫婦となる。そして鎌倉で夫婦生活を営むなか、さまざまな不思議体験に遭遇するという物語だ。

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 鎌倉といえば、かつて「幕府」が存在したこともある、由緒正しき土地である。しかし裏を返せば、多くの政争が繰り広げられ、数々の怨念が蓄積されている場所でもあるのだ。そのため作品にはほとんどのケースで異界や魔物といった、この世ならざるものが登場する。基本的には一色夫婦の周囲で起こる不思議な現象を、彼らが中心となって解決していくというスタイルだ。

 先に「解決していく」と述べたのには理由がある。実は一色正和は、小説家のほかに別の顔を持つ。それは鎌倉警察署に密かに存在する「特捜課」に、特別顧問として協力していることだ。特捜課は別名「心霊捜査課」とも呼ばれ、超常的な難事件を担当する部署。そこに舞い込んでくる奇妙な事件を、正和は自慢の推理力を駆使して解決に導いていくのだ。事件には殺人現場などショッキングなシーンも描かれるが、西岸氏の描く穏やかな絵柄のおかげでそれほど恐ろしくは感じないので、そのテの描写が苦手という人はご安心あれ。

 またこの作品は1982年スタートのため、時代的に懐かしいアイテムも多数登場する。例えば一色家で使われている電話はダイヤル式で、正和は文章を原稿用紙に万年筆で書く。もちろん最近の話では、正和以外の作家がノートパソコンを使っているシーンが描かれるなど、作品内での近代化は進んでいるようである。その中で面白いと感じたのは、いわゆる「使い捨てカメラ」だ。1993年に描かれたエピソードに登場するアイテムだが、カメラ機能付き携帯の普及により、ほとんど見かけなくなっていた。しかし現在、なぜか再ブームが到来しているのだとか。こういう部分からも楽しめるのが、長寿作品の奥深さといえそうだ。

 このような数々のエピソードで彩られている映画『DESTINY鎌倉ものがたり』。映画から入る人も多いだろうが、原作から手に取ってみるのもオススメだ。「あの話がどのようなところで使われるのか」や「原作と映画の違い」などは、原作を知らなければ分からないからである。もちろん映画を観てから原作を読み、もう一度映画を観るのも一興ではなかろうか。

文=木谷誠