売っているのは「攻撃力1」のひのきの棒のみ!? スタイリッシュな武器屋がスタイリッシュすぎてカッコいい!!

アニメ・マンガ

2018/1/5

『スタイリッシュ武器屋』(弘松涼/主婦の友社)

 例えばRPGをプレイしている時、人は強い武器を求め、そのためにお金を稼ぐ。安価で“ないよりはマシ”程度の武器を使用するのは最初だけで、ゲームを進めていくうちに高価な武器や伝説の武器を手にし、ボスへと挑むのが普通だろう。もしラスボス近くで攻撃力のほとんどない「ひのきの棒」なんて使っているプレイヤーがいたら、余程のドMプレイヤーかゲームの知識がない初心者だと考えるのが普通だ。

 それは、『スタイリッシュ武器屋』(弘松涼/主婦の友社)の世界でも同じ。栄えた街である交易都市アイゼンハードには、豪華な作りの高価な武器を取り揃えた武器商人たちがたくさんいて、冒険者たちに武器を売ろうと活気づいていた。

 しかし、そんな高級な武器屋が並ぶ街の一角に、なぜかひのきの棒だけを売っている武器屋があった。その店はひのきの棒専門店とは思えない高級かつスタイリッシュな店構えで、店内には綺麗に磨かれたガラスケースがずらりと並んでいる。そしてこの店唯一の店員である武器商人の男・伊藤は、眼鏡にスーツ姿とこれまたスタイリッシュ。そんな一見ちぐはぐな店だが、実はこの店、知る人ぞ知る最強の武器屋だった――。本作品は、この武器屋、そしてひのきの棒を中心に様々な冒険者や少女の戦いが描かれていく、スタイリッシュな物語。

 本作品の魅力は、なんといっても強敵相手にはゴミ同然であるハズのひのきの棒がこれでもかと大活躍する点にある。ひのきの棒を手にした武器屋の客たちは、伊藤の指導のもと、1本5ゴールドで売られているそれでワイバーンなどのドラゴンや強敵をサクサクと倒していく。その様子はまるで奇跡のようで、しかし彼によって全て計算されている。

 伊藤の作戦は、敵の能力や特徴を利用してダメージを与えるという現実的(?)な戦法から、ひのきの棒を輪切りにして繋げておくことで連鎖効果を狙うというゲーム的世界ならではの戦法まで多岐にわたる。ただ1つ、どの戦いでも共通しているのが、ひのきの棒が大活躍するということ。だんだん、ひのきの棒が超強力なマジックアイテムに思えてくる。

 この物語は、いくつかの章ごとに伊藤以外のメインキャラクターが変わっていく。例えば、一流の戦士を目指して田舎から出てきた少女・ヴァルナと、托鉢ととんちしか使えない戦闘に不向きな僧侶・珍念。例えば、天才軍師と呼ばれる美人・エルザと、オークに捕まった家族を助けに向かおうとするレベル1のホビット・パジェット。そして1巻後半から2巻のメインヒロインとなるエルフの少女・ノエルなど。どのキャラクターたちも追い詰められて困り果てた状態、もしくは何らかの訳あり状態で伊藤の店へとやってくる。

 伊藤は、そんな訳ありのお客さんが一体何を考え、何を思っているのかを的確に見抜き、スタイリッシュに最善の道とひのきの棒を提案する。彼の教えを受け入れて従った者たちは、それぞれ思いを遂げ、人として成長していく。そしてキャラクター一人ひとりの物語が、章を追うごとに繋がり、交わっていく――。

 この『スタイリッシュ武器屋』は現在2巻まで刊行されているが、この2巻の間に既に何度も「あれ、これって!?」「さっきのって……」と伏線が回収され、読み返してしまった。まだまだ伊藤の正体など気になることは山ほどあるが、読めば読むほど状況が腑に落ち、満足感を得ることができる。ラノベ系主人公が活躍する話やキャラクターが美少女尽くしの話に飽きてきたら、たまには本書のようなスタイリッシュな男が活躍し、暗躍するラノベもいいものだ。

文=月乃雫