2018年は「銘」じゃなくて「寓話」で目標を決めてみる? 仕事に人生に「効く」古今東西の教え

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更新日:2018/1/29

『ものの見方が変わる 座右の寓話』(戸田智弘/ディスカヴァー・トゥエンティワン)

 寓話とは、難しい「処世訓」を分かりやすく大衆に伝えるための物語である。『ものの見方が変わる 座右の寓話』(戸田智弘/ディスカヴァー・トゥエンティワン)は、古今東西の寓話から、仕事や人生に「効く」教えをまとめた一冊だ。

 寓話の後には、著者の意見を交えた解説が書かれているので、「聞いたことある」程度の寓話の内容を深めたり、一般的な解釈ではなく、違う角度からの考察を楽しむことができたりと、ただのアンソロジーではないところが、本書のポイント。

 人間や世界に対する「真理」を知りたい時、仕事や人間関係で悩んでいる時、寓話はあなたの視界をクリアにしてくれるだろう。会社の朝礼や学校の授業、新年会での雑談などにもおススメだ。また、2018年の目標を漠然と設定するのではなく、寓話で定め、目的をより具体的にしてみるのもいいのではないだろうか?

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 読み物としても面白く、様々な「使い方」ができる本書は、実に77話もの寓話が収められている。その中から選抜して2つをご紹介しよう!

≪空を飛ぶ馬≫
 昔、ある男が王の怒りを買って死刑を宣告された。男は王に命乞いをした。
「王様、私に王様の馬をお預けください。一年の猶予をいただければ、馬に空を飛ぶことを教えましょう。一年経ってできなかったら私を死刑にしてください」
 王様はこの命乞いを受け入れた。ただし「一年経って私の馬が空を飛ばなかったら、お前を殺すからな」と付け加えた。
 この話を聞いた囚人の仲間は「馬が空を飛ぶはずがないだろ!」と彼をなじった。しかし、男はこう答えた。
「一年以内に王様が死ぬかもしれない。私が死ぬかもしれない。あの馬が死ぬかもしれない。一年の間に何が起こるかを誰が言い当てられる? それに、一年あれば馬が飛ぶようになるかもしれない」

 この寓話の教訓は「迷ったら『できる』と言う」ということ。

 現実的に、絶対に不可能なことは論外として、「できるかどうか分からないことを『できます!』と言うのは、仕事の作法として正しい」。「自分には難しいかも」「経験もないし、無理だろう」と新しい仕事を断り、チャンスを潰してしまうよりも、とりあえず「できる!」と引き受けてみる。それで相手の求めるレベルまで到達することが難しければ、誰かに助けを求めればいい。「成長の機会を取り逃がしてはいけない」のだ。

≪目をなくしたカバ≫
 一頭のカバが川を渡っているときに自分の片方の目をなくした。カバは必死になって目を探した。(中略)
 永遠に目を失ってしまうのではないかと恐れたカバは、休むことなく、一心不乱に目を探し続けた。それでも、やはり目は見つからず、とうとうカバは疲れはてて、その場に座りこんでしまった。
 カバが動きまわるのをやめると、川は静寂をとり戻した。すると、カバがかき回して濁らせていた水は、泥が沈み、底まで透きとおって見えるようになった。こうして、カバはなくしてしまった自分の目を見つけることができた。

 このカバの寓話から教えられることは、忙しく動き回るよりも、時には「心を静かに保つことで、心の中の舞い上がった泥を沈めてみよう」というもの。

 現代人はとにかく忙しく、隙間時間にもスマホをいじったりしている。だが、「ぼんやりする時間」は人間にとって大切なものだ。アイデアがひらめくのも、「ぼんやり」している時が多いという。

 また、人はずっと動き続けることはできない。「しばらく走ったら休息をとり、自分の走りを見直すのが賢明である」という。

「休む」ことに罪悪感を持ってしまう方は、このカバの寓話を思い出し、「休むことも仕事の内」だと考えてみるのはいかがだろうか?

文=雨野裾