クセは強いが健康によい発酵食品! 美味しく料理して身も心も幸せに!『兄ート先生の発酵メシ』【作ってみた】

マンガ

更新日:2018/2/5

『兄ート先生の発酵メシ 1』(羽鳥まりえ/新潮社)

 子供の頃、あまり「納豆」が好きではなかった。おそらくあの独特な「匂い」がダメだったのだと思うが、現在では普通に食べられるのだから、人間とは不思議なものである。まあ私に限らず、強烈な匂いを放つ食べ物が苦手な人は少なくないと思うが、それは納豆などの「発酵食品」に多く見られる特徴だ。納豆のほか「味噌」や「漬物」など、日本人に馴染み深い発酵食品は数多い。そして上手に付き合えば、健康にも非常によい影響をもたらしてくれる。『兄ート先生の発酵メシ 1』(羽鳥まりえ/新潮社)は、そんな発酵食品と美味しく付き合う兄妹の日常を描いたグルメコミックだ。

 本書の主人公・新野意志人は教師だが、現在休職中。妹の凛子から「兄ート」と呼ばれ、若干肩身の狭い状況である。それでも妹のご機嫌や「お通じ」を心配しながら、「発酵食品」を使った食事を考える日々なのだ。そもそも「発酵食品」とはどういうものかといえば、食品を微生物などの作用によって加工したもの。食べられなくなってしまうと「腐敗」だが、食べられるように美味しく変化すれば「発酵」と呼ぶ。この発酵食品を素材にした料理で、言い争って険悪となった兄妹の仲を元に戻すという物語だ。

 元々、意志人は中学校の教師だった。しかし本編ではあまり詳しく語られていないが、何らかの事情により彼は休職を決断する。妹の凛子は弁護士であり、一向に復職する気配のない兄に対し、小言の絶えない日々。さらに「お通じ」の状況を聞かれたり、下着を勝手に洗われたりしてイライラは最高潮に達していた。そんな凛子のために、意志人は科学の力を利用した「発酵メシ」を作ることに。例えば豚ロース肉を味噌と酒に漬け込むことによって、うま味を引き出すと共に食感を柔らかくするのだ。この発酵メシを食べた凛子の反応はといえば──「おお~いふいいぃぃ~い!!(おいしい)」と、まさに昇天状態。こうしてふたりの諍いは、なんとなく収まるのである。まあそんなワケで、どのくらい「おお~いふいいぃぃ~い!!」のか試してみたいと思うのは人情であろう。

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【納豆そぼろ丼 温玉のせ


 このメニューは、意志人が教師をしていた頃の生徒・池澤を家に招いたときに出されたもの。生徒の悩みを聞いているうちに、意志人が自宅で塾を開こうと考えることになる重要なエピソードだ。生徒を勝手に呼んだことに怒る凛子を尻目に、池澤と共にテキパキと料理を進めていく。材料は2人前で「納豆1パック」「合いびき肉140g」「しょうがひとかけ」「長ネギ10cmくらい」「もやし100g」「ほうれん草4株」「玉子2個」「ごま油」「ごはん2人前」、調味料A「しょうゆ大さじ1」「酒大さじ1」「砂糖大さじ1/2」「味噌大さじ1/2」、調味料B「しょうゆ大さじ1」「酢大さじ1」「ごま油大さじ1」「ごまお好みで」以上である。作りかたは以下。

1.お湯を沸かし、火を止め、玉子を入れてフタをする(5分ほどで温泉玉子になる)。
2.もやし、ほうれん草をゆで、調味料Bであえてナムルを作る。
3.しょうがと長ネギをみじん切りにし、合いびき肉と共にごま油で炒め、調味料Aと納豆を加えて納豆そぼろの完成。
4.ごはん、ナムル、納豆そぼろ、温泉玉子の順に盛り付けたら「いただきまーす」

 この丼を食べて、妹と生徒はその美味しさに我を失っていたが無理もない。納豆とそぼろは食感の違いが楽しめるだけでなく、そのうま味も掛け合わされてまさに絶品。温泉玉子やナムルとの相性もバツグンで、非常に完成度の高い料理だ。納豆が苦手な人でも、これなら食べられるのではないだろうか。クセの強い発酵食品は多いが、料理しだいでさまざまな可能性を見せてくれる。健康にもよいので、いろいろな食べかたを試してみてもらいたい。

文=木谷誠