【発達性トラウマ】が失敗を繰り返す理由? 人間関係で悩む人に勧めたい「ニコニコの関係」

暮らし

2018/1/10

『他人とうまく関われない自分が変わる本』(長沼睦雄/青春出版社)

 人付き合いは難しいが、比較的誰とでも良好な人間関係を築きやすい人もいれば、それが人一倍困難な人もいる。

『他人とうまく関われない自分が変わる本』(長沼睦雄/青春出版社)の著者は25年以上の精神科医としてのキャリアを振り返ると、特にここ10年で「人間関係のストレスで精神的に追いつめられた人たち」が増えてきた実感があるという。そういった人たちの多くは、人間関係で失敗を繰り返すたびに「うまくいかないのは、ネガティブな自分のせいだ」「気弱な性格だから、主張できずに振り回されるんだ」と自分を責める。しかし、本書はこう伝える。失敗経験から改善を試みているにもかかわらず人間関係がうまくいかないのなら、「発達性トラウマ」を抱えていることが原因かもしれない、と。

発達性トラウマ障害とは、「小児期あるいは思春期早期から、1年以上にわたって継続して、かつ、反復的に深刻な暴力を受けたり、目撃する」、または「親の離婚などによって親が何度も変わったり、ネグレクト(育児放棄)などを受ける」ことによって負った心的外傷のことを指します。

 発達性トラウマの傷が大人になっても残っていると、心身にさまざまな症状が出る。その一つが「他人とうまく関われない」こと。

 発達性トラウマを抱えている人たちは、対人関係において「ニコイチ」の関係を求めるという共通項があるという。

ふたりなのに、まるでひとりのように相手と自分が重なり合っている。2個で1個だから、ニコイチです。
重なり合っているために、どちらかがどちらかの上に乗らなければ、この関係は成り立ちません。つまり、甘えと依存の関係であり、不自然で生きづらい関係といえるでしょう。
自我(自分に対する意識)には自分と他人を分ける、目に見えない「境界線」というものがあり、その境界線の内側にそれぞれの「自分軸」があるわけです。ところが、ニコイチの関係では、おたがいの境界線を踏み越えて、相手と重なり合おうとするのです。

 また、発達性トラウマを抱えている人たちは、これとは逆に「親密な関係を避けようとする」こともある。本書によると、これも「ニコイチ」になりたがる人と根っこは同じ。自己肯定感が低いために、相手から見捨てられることへの不安につきまとわれているため、良好な人間関係が築けない。

 では、発達性トラウマを抱える人が良好な人間関係を築くためには、どうしたら良いのだろうか。

 本書は、「ニコニコの関係」を意識することで解決できる、という。

ニコイチの関係とは対照的なのが、「ニコニコの関係」です。2個で2個のままだから「ニコニコ」。独立した人間同士が適度な距離を保ちながら、そのときどきに応じて、近づいたり、離れたりするのが、ニコニコの関係の原則です。

 適度な距離を保ちながら人と付き合えば、確かに人間関係で傷つくことは少ないかもしれない。しかし、ほどほどの距離を保った関係では、寂しさを感じるかもしれない。

 それでも本書は、“ちょっと寂しい感じ”がするこのニコニコの関係こそが、独立した人間同士がおたがいを尊重し合う良好な人間関係だとしている。

文=ルートつつみ