人生をゲームにたとえて理想のプレイを伝授! 複雑化した現代社会システムにも対応した完全攻略本――気になる中身は…

社会

2018/1/11

『リアル人生ゲーム完全攻略本(ちくまプリマー新書)』(架神恭介、至道流星/筑摩書房)

“人生”はよくゲームにたとえられる。『人生ゲーム』は日本を代表するボードゲームのロングセラーだ。もちろん、本物の人生はゲームのようにやり直しやセーブをすることはできない。ただ、人生をゲームに見立てることによって、より上手な“プレイ”ができるようになるかもしれない。『リアル人生ゲーム完全攻略本(ちくまプリマー新書)』(架神恭介、至道流星/筑摩書房)はそのための“攻略本”だ。

 約25万年前に“地球”サーバ上で正式稼働した多人数参加型ゲーム『人生』。このゲームを開発した神Aは、『人生』のかつてない自由度の高さに自信をもっていたが、130億年前に『銀河』というゲームを開発した上司の神Bから「プレイヤーから『人生』がクソゲーだという苦情が殺到している」と叱責される。苦情の内容はほとんど同じ。ゴールや目的がわからない、どうすれば勝てるのかわからない、そもそも何をするゲームなのかわからない――。

 そこで神Aはいやいやながら『人生』の“説明書”を書き、部下のガブリエルを通じて地球サーバの全プレイヤーたちに告知。ところが、大混乱の末にプレイヤーたちは“説明書”を「素朴すぎて使えない」と判断。現代の複雑化した社会システムに適用可能なまでにアップデートした『リアル人生ゲーム完全攻略本』を完成させた――というのが、本書の流れ。「説明書篇」が第一部、「攻略本篇」が第二部という二部構成だ。

「説明書篇」で解説される『人生』のゲームデザインはシンプルだ。プレイヤーは美味しいものを食べたり、生殖行為を行ったり、人から讃えられたり、自尊心を満足させたりすることで「幸福点」を入手し、ゲームオーバーになるまでハイスコアを目指す。各自与えられた「寿命」リソースを「ジョブ」によって「お金」リソースに変換していくことが、ゲームの基本的な流れで、そのためにプレイヤーはさまざまな「スキル」を獲得していく。

 途中で「性行為」「就職」「結婚」「子育て」といったイベントが発生し、それをクリアすることで「実績解除」されて幸福点にボーナスが加算されることもあれば、「地震」のようなランダムイベントや交通事故や経済破綻、戦争などのプレイヤー間のアクシデントが発生することもあるが、それらのバッドイベントもゲーム性のうち。それが『人生』というゲームなのだ。

 神Aが約2000年前にこっそり大工の息子としてログインしたことがあるという秘密や、ハイスコア暫定1位の某“チート野郎”の正体には思わずニヤリとさせられてしまう。

 そんな「説明書篇」が神Aの愚痴まじりのユーモラスな解説で『人生』の基本的な構図を紹介するのに対して「攻略本篇」は非常にシビアだ。プレイヤーたちが勝手に創り上げた“信用創造”によって莫大にふくれあがった「お金」リソースの仕組み、仕事、結婚、離婚、介護といったライフイベントのメリットとデメリット、財政破綻、世界金融危機、大型自然災害、戦争、人口減少といったビッグイベントの可能性とリスクを具体的な数字で挙げながら、このゲームが創造者である神Aの想定を超えて複雑で理不尽で残酷なものになっていることを解説していく。

 どんなゲームであっても、そのシステムを熟知して、より効率的な攻略方法を考えていくプレイヤーが有利になることは間違いないだろう。ひとりの『人生』プレイヤーとして、「このぼんやりとした“プレイ”で、自分はこの“ゲーム”を攻略できるのだろうか」と思わず考えさせられた。

文=橋富政彦