伊集院静が湘南の伝説のホテルで過ごした8年間に寄り添う

小説・エッセイ

2012/2/22

伊集院静 なぎさホテル

ハード : iPhone 発売元 : M-UP
ジャンル: 購入元:AppStore
著者名: 価格:1,000円

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かつて、名だたる作家たちが宿やホテルにこもり執筆活動に専念したという話はよく聞きますが、著者がホテルで暮らしたのはなんと8年以上。作家になる前、離婚の慰謝料で膨大な借金を抱えて喧嘩やギャンブルに明け暮れ、トランクひとつで偶然流れ着いた縁もゆかりもない湘南のホテルに住みついたというのだから、まるで映画のストーリーのよう。エッセイとは思えない、あまりにドラマチックなオープニングにすぐ引き込まれました。

無一文に近い状態で仕事もせず、目的もないままにスタートするホテル暮らしの行方、著者の才能を認めて何があってもサポートする姿勢のホテル支配人や、ユニークで温かいホテル従業員との交流が次第に深まっていく様子は、派手な盛り上がりはないものの、リアリティにあふれ、切れ間なく読み進めてしまいます。

そして、この本はビジュアルが印象的。本の始まりは、セピア色の動画。波が打ち寄せては返す海岸の波打ち際の映像は、まるで映画のような世界観です。各章の初めには、カメラマン宮澤正明氏が撮影した、ホテルの断片を切り取ったセピア色の写真が映し出され、こちらも想像力がかき立てられます。この写真によって、物語がさらにイキイキと感じられ、自分もこのホテルにいるような気分に。

巻末には、伊集院氏自らが登場し答えるインタビュー動画も収録されており、今までほとんど語られてこなかった前妻・夏目雅子さんのエピソードまで含まれています。この本に登場する、尖がって生きていた若き日の伊集院氏の姿を思い浮かべながら見ると、人生の面白さを感じることができます。真似できない人生ではありますが、どんな状況でも人間何とかなるさという勇気をもらえる作品でもありました。

主題歌として井上陽水氏の歌が収録されているのもまたユニークです。


セピア色の写真と手書きのタイトルが印象的な表紙。オープニングとして波打ち際の動画が流れる

各章のタイトルバックには宮澤正明氏の写真がバックに使われている

各章の最初に差し込まれているホテルをイメージさせる写真

巻末には、伊集院氏本人へのインタビュー動画が4本収録されている

このエッセイの主題歌として井上陽水の「魔力」の情報も。iTunes Storeへのリンクも貼ってある