名アナウンサーも話し下手だった!? 「コミュ障」から始まったコミュニケーション術とは?

人間関係

公開日:2018/1/14

『「コミュ障」だった僕が学んだ話し方(集英社新書)』(吉田照美/集英社)

 お正月が過ぎ、2018年も徐々に動き出している。気楽な仲間同士の新年会だけではなく、対外的な年始の挨拶や新年交歓会なども含め、何かと人との交流が活発な時期が続く。社交的であれば難なくこなせるだろうが、実は口下手で伝えたいことが上手くまとまらず、会話が続かずに歯がゆい思いをしている人もいるのではないだろうか。

『「コミュ障」だった僕が学んだ話し方(集英社新書)』(吉田照美/集英社)は、元・文化放送アナウンサーで今も数々のラジオ・テレビ番組の進行役として活躍している著者が「人と人がどのように触れ合えば、より理解し合えるか」をテーマに、長年の経験から培ってきた “しゃべり方、聞き方、言葉遣い”などのコミュニケーション術を自らの豊富な体験談(時に失敗談)とともに語る1冊である。

 今やフリーアナウンサーとして著名な吉田氏であるが、10代の頃にあることがきっかけで「コミュ障」になってしまう。だが、孤独を経験したことで、これからはコミュニケーションを大切にしていこうという気持ちで「一念発起」し、大学ではアナウンス研究会に入部。ラジオを聴いて話術や語り口を研究するようになったのは、この頃からだそうだ。不思議な紆余曲折の末、文化放送に入社。アナウンサー人生が始まったのだ。

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 だから、吉田氏は話し下手を否定しないどころか、「“話し下手”を目指そう」と語りかける。「コミュ障」からの出発がゆえに、その気持ちに沿ったコミュニケーション術がたくさんある。

 まず、実践的なアドバイスとして話し方よりも「自分のしゃべりを録音して聴く」ことを勧めている。そして違和感があるようならば「目標とする人のしゃべり方や声のトーンを真似して」反復してみるといいそうだ。そして「どう改善していったらいいかを考える」。そうしていくうちに新たな「自分の会話の“型”」が持てるようになるという。

 次に“型”を極めて、現在「しゃべりのプロ」として活躍している有名人たちのキャラクターや話術についても説明している。そのなかでも安住紳一郎氏の徹底している「キャラ作り」や、笑福亭鶴瓶氏の日常を楽しむことで笑いに変えてしまう“情報アンテナの高さと話術”は、もちろん一朝一夕とはいかないが読者にも参考になり、見習えるところがありそうだ。

 一方、会話をする相手についての心構えにも触れている。特に仕事上での「苦手なタイプ」はあえて話してみて自分のコミュニケーション能力を向上させるいい機会ととらえてみる。「無口な人」については寡黙なタイプが多い大相撲の力士の取材を例にあげ、ネタを集めることによって質問力や観察力もつき、会話の糸口を自ら見つけることにより、「会話能力」が高まる。苦手とか無口で困ると思いこむよりも「この人は自分を成長させてくれる存在なんだと思って接することが大切」と吉田氏は説く。

 この他、「相手を怒らせてしまった時の対処法」「雑談の達人になる方法」「明るい印象を与える話し方の秘訣」「上手な相槌の打ち方、下手な打ち方」「相手が喜ぶと思っても逆効果な言葉」など、会話力アップに役立ちそうな項目が並んでいる。

 沈黙を回避し“テンポよく会話を続けていく”ために大切なことがあるという。

会話は1回限りの勝負ではありません。人生を続けている限り、会話する機会はそれこそ何千、何万回も訪れます。ですからみなさんには失敗を恐れず、何度も経験を重ねて「先回りできる感性」を磨いてほしいと思います。

 年も改まった。今年もいろいろな人との会話を楽しみながら、自分の世界を広げてみよう。

文=小林みさえ