犯人の真の目的とは? 読者を幻惑する誘拐ミステリー作品、呉勝浩『ロスト』【作家バトル企画「RANPOの乱2018」参加作品】

文芸・カルチャー

2018/1/16

『ロスト(講談社文庫)』(呉勝浩/講談社)

 江戸川乱歩賞出身作家の呉勝浩と下村敦史が、互いの新刊をめぐってガチバトルを繰り広げる前代未聞の人気投票企画、その名も「RANPOの乱2018」が1月16日スタートした。この1月に講談社文庫より刊行される呉勝浩の『ロスト』と下村敦史の『叛徒』。いずれ劣らぬ現代ミステリーの力作が、練りに練られたダブルカバーと著者自身による渾身のレビューをまとい、同時に書店の棚に並ぶのだ。

 ここでは白いダブルカバーとともに刊行される呉勝浩の『ロスト』について、内容を紹介しておきたい。コールセンターを経営する会社に勤務する下荒地直孝は、月に何度かある電話のラッシュに忙殺されていた。そんな折、奇妙な電話がかかってくる。「ムラセアズサを預かっている。これはイタズラではなく、正真正銘の営利誘拐だ」。

 機械で加工したような声の相手は、すぐに警察に通報するよう告げて電話を切る。「ムラセアズサ」とは数日前から無断欠勤を続けている女性スタッフ・村瀬梓のことなのか。

 駆けつけた捜査員が見守るなか、下荒地は第2、第3の電話を受ける。犯人の要求は奇妙なものだった。身代金は1億円。それを100万円ずつに分け、100人の警察官に持たせて全国の所定のスポットまで輸送させろ、というのである。事件は梓の所属していたタレント事務所の社長・安住や、大阪府警捜査一課の若きエリート麻生、浪速署生活安全課のベテラン警察官・鍋島など、さまざまな人を巻き込みながら、思いも寄らない展開を見せてゆく。

 呉勝浩は2015年、『道徳の時間』で第61回江戸川乱歩賞を受賞してデビュー。その後も『蜃気楼の犬』『白い衝動』『ライオン・ブルー』などの力作を意欲的に発表している作家だ。本書『ロスト』の魅力はなんといっても、真意の読めない奇抜な犯行だろう。

 なぜ誘拐犯は職場に電話してきたのか? なぜ警察に連絡させたのか? なぜ1億円を100等分させ全国に散らせたのか? 異例づくしの誘拐事件は後半にいたって、予想もしない構図を浮上させてゆく。いくつものパーツが関連しあい、意外な真相へとつながってゆく構成は見事で、600ページを超えるボリュームながらだれることがない。

「RANPOの乱2018」は読者のWEB投票によって勝敗が決する企画だ。投票期間は1月16日から5月14日まで。「面白かった」はもちろん「面白そう」「読んでみたい」でも構わない。気軽に参加できるので、講談社文庫の特設サイトなどをぜひチェックしてみてほしい。勝つのは『ロスト』か、『叛徒』か。勝敗の結果がいまから楽しみだ。

文=朝宮運河

●公式サイトはこちら:http://ranpo-ran.com