“手にとって何度も見たい”全国の書店員さんに支持された2017年ベスト絵本は、ヨシタケシンスケさんの『なつみはなんにでもなれる』――「第10回MOE絵本屋さん大賞2017」贈賞式レポート

文芸・カルチャー

2018/1/22

 空前の絵本ブームといわれる今、書店の絵本コーナーには本当にたくさんの本が並んでいます。一体、どれを選んだらいいの…? そんなときには絵本専門誌である『月刊MOE』(白泉社)が主催する「MOE絵本屋さん大賞」受賞作品を手にとってみてはいかがでしょうか。全国の絵本専門店・書店の児童書売場担当者(=絵本屋さん)3000人にアンケートを実施。最も支持された新刊絵本30冊を決定する年間絵本ランキングであるこの賞は、いわゆる「現場」のプロが選んだだけに、その面白さは折り紙つきなのです。

 現在発売中の最新『MOE』2月号では、「第10回MOE絵本屋さん大賞2017」を大特集。先日、都内某所にて贈賞式が開催されました。

 受賞作家たちが喜びを語ったその模様をお届けします。

『MOE』編集長の門野 隆さんの挨拶から贈賞式はスタート。続いて第10位までのMOE絵本屋さん大賞、新人賞、パパママ賞(※)の受賞作品が次々発表され、白泉社の鳥嶋和彦代表取締役社長がお祝いの言葉を寄せました。

〈月刊『MOE』門野 隆編集長のご挨拶〉

「絵本の世界はとてもバラエティに富み、アイデアとこだわりが詰まっています。そんな絵本の素晴らしさがこの賞を通じてもっとたくさんの方に伝わり、ロングセラーになることを願っています」

〈白泉社 鳥嶋和彦代表取締役社長の祝辞〉

「受賞者のみなさま、おめでとうございます。電子書籍が行き渡っているからこそ、“手にとって何度も見たい”という気持ちに応える「本」が持つ本来の力が試されている時代だと思います。絵本の世界ではそれがきちんと届く。素晴らしいことだと思います」

 続いて受賞作家にクリスタル楯を贈呈。その後、それぞれが個性豊かなスピーチで喜びと感謝を伝えました。

■1位『なつみはなんにでもなれる』(ヨシタケシンスケ:作・絵/PHP研究所)

「コレ、なーんだ!?」パタパタ働くお母さんに、なにかのマネをして当ててもらうゲームを始めるなつみ。でも何度やってもお母さんは当てられず…。親子のやりとりに思わずほっこりする絵本。

「下の息子が5歳くらいの時、いつも『なんで俺の言うことがわからないんだ』って怒っていたんですが、『そうだよな。わかり合えないよな』と。その『どうして伝わらないんだ』というのを、どうにか面白おかしくできないかと考えたらこの本になりました。実はお母さんが最後まで一回も笑ってないんですね。笑顔とか喜びのポーズがなくても幸せというのは表現できるんじゃないかというのが描いていて思ったことでもあります」

■2位『いっさいはん』(minchi:作・絵/岩崎書店)

 じっとしていられない、ごみを集める、なんでも散らかす…思わず笑ってしまう “1歳半”の子どもの不可思議な行動をユーモラスなイラストで捉えた一冊。親だけでなく子どもも楽しめる。

「もともとツイッターにあげていたイラストになぜかすごく反響があり、それが元になって生まれた本です。子どもの面白い行動をなんとなく書きとめておいただけだったんですが、多くのお母さんたちから“あるある”といわれ、『そうか、これは“あるある”だったんだ…』と。初めての絵本がこうやってたくさんの方に読んでいただけて本当に嬉しいです」

■3位『つまんない つまんない』(ヨシタケシンスケ:作/白泉社)

 男の子の口ぐせは「つまんない」。せかいいち つまんない ゆうえんちって? おとなは つまんないとき どうしてる? 「つまんない」の謎を掘り下げるユーモラスな絵本。

「長男がよく“つまんない”と言ってたんですが、自分も子どもの頃は同じだったし、ああいうときって何を言われてもムダなんだよなというのを思い出して。じゃあ“つまらない”ことをテーマに、それをどうにかしようと、というかそもそもどうにかできるのか考えたら面白いんじゃないかと生まれた本です。そう言われてみれば確かにそうかもしれないとか、何か読み終わったときに同じものが違ったものに見えてくるような、そういう本をこれからも作っていけたらいいなと思っています」

■4位『おいしそうなしろくま』(柴田ケイコ:作・絵/PHP研究所)

「たべもののなかにはいってみたら、どんなかんじかな?」食べることが大好きな食いしん坊のしろくまが食べ物の中に入ってしまうシュールな絵本。なんとも幸せそうなしろくまの表情に注目。

「もともと私は食べることが大好きで、それと動物を組み合わせたら面白いんじゃないかと。子どもたちの生活の中でも食べるって大事なことだと思いますし、ただただ食べるのが大好きというのを伝えたくて生まれた本です。自分にとって2冊目の絵本でこんなに反響がくるとは思っていなかったのでびっくりしています」

■5位『ノラネコぐんだん あいうえお』(工藤ノリコ:作/白泉社)

 にぎやかなノラネコたちと楽しく言葉を覚えられる、人気シリーズ「ノラネコぐんだん」初の知育絵本。絵の中に盛り込まれた言葉は全部で600個以上。ひらがな&カタカナ表付き。

「もともと子どものものを考えるのがすごく好きなので、ノラネコぐんだんを通じて色々なことに挑戦できるのがすごくありがたいし、嬉しいです」

■6位『生きる』(谷川俊太郎:詩、岡本よしろう:絵/福音館書店)

 生きていること、いま生きていること……人生の瞬間の情景を連ねる、長く愛されてきた谷川俊太郎の『生きる』が、姉弟の夏のある日を通じて瑞々しく立ち上がる。名詩の初絵本化。

「素晴らしい詩にぼくが下手な絵をつけて怒られるんじゃないかとドキドキしていましたが、こんな賞をいただくことになり、嬉しいというかほっとしております。谷川さんからいただいた“思い切って自由にやってください”の言葉の通りにやったら本ができました。まさに魔法の言葉だと思います」

■7位『ノラネコぐんだん そらをとぶ』(工藤ノリコ:作/白泉社)

 飛行場にあらわれたノラネコぐんだんが、飛行機にしのび込んで飛びたったものの、燃料が入っていなくて…!? ノラネコぐんだんの大胆な行動力が魅力の大人気絵本シリーズ第4作。

「これまでのスタイルを踏まえつつ目新しさを加えたいと思いました。皆さんに楽しんでいただいているようなのでほっとしました」

■8位『おじいちゃんとパン』(たな:絵・文/パイ インターナショナル)

 甘いものが大好きで、食パンにジャムやマシュマロなど甘いものを塗って食べるおじいちゃん。そのパンを楽しみにしている孫の「ちびすけ」の成長を、食パンレシピと共につづる一冊。

「制作中はとにかく頭に思い描いた色彩をそのまま形にすることを考えていて、その先にこんな喜びが待っているとは想像もできませんでした。これからもたくさんの本を作り、自分の“たな”に並べていきたいと思います。」(代読より)

■9位『いらないねこ』(ヒグチユウコ:作/白泉社)

 捨てられた子猫を「おとうさん」になって愛情いっぱいに育てるぬいぐるみニャンコ。そんなニャンコをあたたかく見守る優しい猫たち。愛情と優しさが詰まったオトナ女子にも大人気の一冊。

「うちにいる汚れた小さなニャンコが息子や私の中では生きて動いているように思えてならないのです。こんな感じにニャンコは生きているんですよ、という気持ちで描いています。そんな独り言の妄想のようなお話を選んでくださったなんて、とても光栄です」(代読より)

■10位『アームストロング 宙(そら)飛ぶネズミの大冒険』(トーベン・クールマン:作、金原瑞人:訳/ブロンズ新社)

 夜ごと天体望遠鏡をのぞく小ネズミは、月は地球をまわる衛星だと発見し、ニューヨークから月を目指す。重厚で臨場感あふれるイラストとストーリーが印象的。世界27言語で翻訳されている。

「トーベンさんの本は、絵はもちろん物語も桁外れに面白いので、ぜひ読んでほしいですね。絵本の世界というのは子どものためだけではもったいない。若者にも、いや若者だからこそ楽しめる絵本がたくさんあるので、今年はYA(ヤングアダルト)向けの絵本を紹介する本も出す予定です」

■10位『そらの100かいだてのいえ』(いわいとしお:作/偕成社)

 シジュウカラのツピくんが見つけた、雲の上の100階建ての家。天高くのびる家に暮らすのは、くもさん、あめさん、にじさん……そしててっぺんは!? 大人気シリーズ第4弾。

「7年ほど前から伊豆で田舎暮らしをしていますが、近所のおばあちゃんたちに作ってもらった相棒のツピくんを今日は連れてきました。この『100かいだてのいえ』シリーズに刺激されて全国の子どもたちが自分で考えた家を色々考えてくれているんですが、雨とか虹とかこの作品では自然現象を扱ったことで、子どもたちから届く絵が“カップヌードルさんの家”とかガラリと変わったんです。あらためて絵本には子どもたちの想像力を広げる力があると確信しました」

 贈賞式の終わりには上位入賞作に対するレビューの中からMOE編集部がベストワンを選んだ「ベストレビュアー賞」への楯の贈呈も行われ、受賞した書店員さんたちが全国から来場し、喜びをコメント。そして絵本愛に溢れた贈賞式は幕となりました。

取材・文=荒井理恵

MOE絵本屋さん大賞のシンボルキャラクター「ぶーちゃんとおにいちゃん」

(※)0~6歳児向け絵本が対象。絵本屋さん3000人のアンケートでノミネート作品を選び、中学校入学前までのお子さんのいるパパ・ママの投票で決定。