外資系で仕事がデキる人の口ぐせ――「その話、○○にできない?」

ビジネス

公開日:2018/1/25

『2軸思考』(木部智之/KADOKAWA)

■イメージは「伝える力」が強い

 私は、500人ほどの部下を抱えてプロジェクトマネジメントの仕事をしていますが、メンバーと会話するときには極力、紙に図や表、グラフ、ときには絵を書いてコミュニケーションするようにしています。
 図や表といったイメージは、相手に伝える力が強いからです。

 たとえば、初めて出張に行った土地で道に迷ってしまったとしましょう。道行く人にたずねると、次のように言われました。
「この道をまっすぐ行って、3つ目の信号を右に曲がってください。そこには、コンビニがあります。そこからまっすぐ行って、2つ目の信号を過ぎて、3本目の路地を左に曲がってください。その先に小さな薬局があるので、そこを右に曲がってメートルほど歩くと目的地に着きます」

 このように口頭で説明されて、目的地にたどり着く自信はありますか?
 一方で、もし地図を書いてもらったらどうでしょう? 目的地に着く可能性は格段に上がるはずです。これが、イメージの力です。

advertisement

■海外メンバーともイメージでコミュニケーション

 人は、耳で聞いたり目で読んだりした文字の情報を、頭の中でイメージに変換しています。
 簡単な日常会話ではあまり実感しませんが、仕事でちょっと難しい話をしている場面を想像してみてください。聞き手が黙って上を見上げるか、目を閉じて考え込んでいる姿が浮かび上がってきませんか? 
 それが頭の中で情報をイメージに変換している瞬間です。

 文字や口頭で伝えられた情報を、頭の中でイメージに変換する。往々にしてこのプロセスで誤変換が生じ、コミュニケーションミスの原因になります。
 こうしたミスを回避するためには、最初からイメージで伝えればいいのです。


 私がイメージの力に気づいたのは、海外のメンバーと仕事をしたことがきっかけでした。
 こちらが英語で話しても伝わらない、相手が日本語で話してきても正しく理解できないという状況の中、紙に図を書きながらコミュニケーションすると格段に伝わりやすくなったのです。

 そしてイメージの力に気づくと、仕事ができる人ほど肝心な場面でイメージを書き、人を動かしていることがわかってきました。

 私が所属する外資系企業では、役員が参加する会議で「その状況、簡単な図にできないかな?」「簡単な図で整理するとこうだよね」という会話がよく交わされています。

 また、私は上司から「簡単な図に整理できないかな?」と頼まれることが多くあります。仕事ができる人ほど、コミュニケーションにおける「イメージ」の大切さをわかっているのだと思います。

木部 智之(きべ ともゆき)
日本IBMエグゼクティブ・プロジェクト・マネジャー。横浜国立大学大学院環境情報学府工学研究科修了。2002年に日本IBM にシステム・エンジニアとして入社。入社3年目にしてプロジェクト・マネジャーを経験。その後、2006年のプロジェクトでフィリピン人メンバーと一緒に仕事をする機会を得る。英語はもちろん、日本語も含めていくつもの言語を巧みに操り、かつ仕事も優秀な彼らに衝 撃を受け、自分はグローバルに通用する人材なのかと自問自答した。 それ以来、いちビジネスパーソンとして世界中どこでも通用するスキルを身につけることを追求してきた。2009年に役員のスタッフ職を経験し、2010年には最大級の大規模システム開発プロジェクトにアサインされ、中国の大連への赴任も経験。日本と大連で500人以上のチームをリードしてきた。プロジェクト内で自分のチームメンバーを育成するためにビジネススキル講座を始め、そのコンテンツは社内でも評判となった。著書に『仕事が速い人は「見えないところ」で何をしているのか?』『複雑な問題が一瞬でシンプルになる 2軸思考』(いずれもKADOKAWA)がある。