BLのLの意味は…もはや少女マンガを超える胸キュンの連続! 腐男子と不良のセンパイの青春ライフ

マンガ

公開日:2018/1/28

『佐々木と宮野』(春園ショウ/KADOKAWA)

「BLのようであってBLではない」新しいジャンルの『佐々木と宮野』(春園ショウ/KADOKAWA)。学園ものであり、「笑い」あり、「青春」あり、じれったくてはがゆい「恋愛」あり、王道少女マンガのような胸キュン展開あり……でも、登場人物は全員、男子。描かれているのは、男子高校生たちの日常だ。これはもうなんと説明していいのだろう……! とにかく、たくさんの萌えが詰まった一冊だった。

 主人公の宮野は、女顔であることが悩みの腐男子。ある時、校内で起きたケンカをきっかけに、「大きな問題はあまり起こさない」ユル系不良の先輩・佐々木に気に入られてしまう。

「みゃーちゃんはかわいいねー、俺と付き合わない?」

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 腐男子だが、今までの恋愛対象が女性だった宮野は、「え、ないです」ときっぱりお断り。


 しかしそれ以降も、佐々木は何かと宮野と関わりを持とうとする。
 最初は戸惑っていた宮野だが、マンガの貸し借りをしたり、その感想で盛り上がったりしながら、佐々木と同じ時間を過ごす内に、佐々木のことを意識し始める。だが宮野にとっては、あくまで「仲のいい先輩」としての関係だ。

 自分のおススメBLマンガを読んだ佐々木に、宮野は「おもしろいって言ってくれましたけど、(先輩は腐男子ではないので)萌えなしで読む気持ちがわからなくて……」と不思議がるシーンがある。
 その際、「だって好きな子のことは知りたいだろ」なんて、佐々木はさらっと(公衆の面前で)言ってのけて少女マンガの王道胸キュン攻撃を繰り広げてきたりするのだが、宮野は動揺しつつも「冗談」だと思い込む。


 宮野にとって佐々木の行動や発言はどこか軽くて、どこまで本気なのか分からないのだ。腐男子である自分への愛あるからかい? そういう友達のノリ? いまいち佐々木の本心が見えない(そして、まさか自分がBL展開に巻き込まれると思っていない)宮野は、そんな佐々木の「好意」を、スルーしたり、ツッコんだり、時に真摯に受け止めたりして学園生活を楽しく過ごしていた。

 だが、読者は知っている。
 佐々木は本気で宮野が好きなのだ。

 本作の萌えは、まさしくここにある。(異論は認めない……!)(笑)
 腐男子の宮野をからかっているような、ややチャラ系の佐々木……だが、意外と純情一途に宮野が好きで、他の男性に嫉妬したり、もっと親しい関係になりたいけど、真剣に告白することを悩んだり、一歩を踏み出すことに躊躇していたり。普段は明るい佐々木が、宮野への恋心に対してだけ余裕をなくして、葛藤している「じれったさ」がたまらなくいい。




 元々BL好きの方は、佐々木のカッコいいけど青臭い姿に胸キュンだし、少女マンガ大好き! という読者は「ヒロイン(本作では宮野)へのヒーローの独占欲」にドキドキだし……。BL好きでも、そうじゃなくても楽しめる内容になっている。

 はたまた、BLに興味はあるけど、手に取るきっかけがなかった方には、2人の「じゃれ合い」のような関係性は初めての「萌え」をもたらしてくれるのではないだろうか。「BLなんてまったく知らなかったわ」という人でさえ、本作を読んだら男の子同士の淡い恋愛模様にハマってしまうかもしれない。

 なお、1月15日に発売された『コミックジーン2月号』には、初詣が舞台の描き下ろし漫画や特別付録のドラマCDなど、本作をより楽しむことができる仕掛けが盛りだくさんとなっている。
 そして先日発売されたばかりの第3巻では、ついに佐々木が「真剣な」告白……!? 佐々木に惹かれつつも、宮野はBL展開を断固拒否するのか……!? 2人の関係が大きく動き出す最新刊。ますます佐々木と宮野から目が離せない。

文=雨野裾

(C)春園ショウ/KADOKAWA