ラーメンのうまさの秘密を科学で解明!

食・料理

公開日:2018/1/29

『ラーメンを科学する』(川口友万/カンゼン)

 単なる異国の麺料理から怒涛の独自進化を遂げ、今や日本の国民食ともいわれるようになったラーメン。その勢いは決してとどまるところを知らない。街を歩けばいたるところにラーメン店があり、昼時となれば行列のできる繁盛店も少なくない。

 どうしてみんなこんなにもラーメンが好きすぎるのか。あまり食べない人もいる一方で「ラヲタ」と呼ばれる熱烈な愛好家もたくさんいる。彼らは週に数度、あるいは毎日ラーメンを食べないと気が済まないという人々だ。スープと麺、トッピング。一見シンプルな料理であるのにもかかわらず、ラーメンには不思議な魔力がある。

 そのラーメンのうまさの秘密に科学の力で迫ったのが本書『ラーメンを科学する』(川口友万/カンゼン)だ。本書の記述はまず、うま味の正体を探るところから始まる。

ラーメンスープは食べ物のだしであり、だしはうま味だ。スープのおいしさの骨組みはうま味が決める。

ではうま味とはなんなのか?

 うま味というのは実のところタンパク質、つまりアミノ酸の味なのだそうだ。アミノ酸は人の生存に欠かせない物質であり、私たちはそれを本能的に欲しがるようになっている。ゆえにアミノ酸の味、すなわちうま味を好ましく感じるのだ。ラーメンのスープのレシピは店舗によってさまざまだが、豚骨や鶏ガラ、昆布、野菜、煮干しなどの食材からしっかり出汁をとって作られている。これらの素材にはグルタミン酸を始めとする各種アミノ酸が含まれており、それらが複雑なハーモニーを奏でることでラーメンのおいしさが作り出されている。さらにうま味には塩気などの他の味を引き立て、全体の味のバランスを調和させる働きもある。もっともうま味が強すぎるのもそれはそれで問題になるらしい。味がしつこくなるし、しかも嫌な後味が舌の上に残るという。あくまでも大切なのは全体のバランスである。

 うま味がほどほどにあり、しかも味の調和がとれた食べ物を私たちはおいしいと感じる。しかしその事実はラーメンに1つの重大な議論をもたらすことになった。化学調味料の問題である。

 化学調味料の正体はグルタミン酸などのアミノ酸であり、それ自体は決して毒ではない。むしろ自然素材だけで作ると日によってラーメンスープの味にバラつきが出てしまうため、味を均一に保つためには不可欠という側面もあるという。しかし一方で化学調味料には本書で専門家が指摘するように「味覚を破壊する」という弊害もある。化学調味料でうま味を足した食べ物は、もともとの素材の味とは関係なくおいしい食べ物になってしまうからだ。

 食材からしっかり出汁をとり、最後の仕上げに化学調味料を少し使う。それならスープに食材の栄養が溶け込んでいるし、あまり問題のある使い方とはいえない。でもだしに使う食材をケチって、安上がりに作ったスープも化学調味料を使えばおいしくなってしまう。食材をきちんと煮込んで作ったラーメンも、化学調味料をどっさり使ったラーメンも、両方とも人間の舌にとっては「おいしい」と感じられるが、両者の中身はまるで違う。ちなみに多くの人は化学調味料の味に慣れていて、化学調味料なしの味を好まない場合も多い。原価と手間をかけるか、コスト削減を優先するか。どちらを選ぶかは店主の良心に任されている。

 本書を読んでいると、スープ1つとっても簡単には語れないことに気づかされる。ラーメンのスープは確かにおいしい。でもその裏にはうま味の絶妙なバランス調整があり、化学調味料というもろ刃の剣的な存在がある。

 料理は科学だといわれるが、それがそのままそっくりあてはまるのがラーメンの世界だ。「飲みの〆のラーメンはなぜうまいのか?」や「ラーメンは熱々で食するのが基本であるのに、つけ麺がぬるめで出てくるのはなぜか」といった素朴な疑問から、スープと麺の味の決め手、市販のインスタントラーメンやチルド麺の製法まで、いたるところに科学ネタが登場する。先ほど紹介した化学調味料の話を始め、かん水、保存料といった賛否両論のあるトピックにも一歩踏み込み、「ラーメンは本当に体に悪い食べ物なのか?」という点について真剣に考察しているところもおもしろい。筋金入りのラヲタはもちろん、科学好きにもおすすめの1冊だ。

文=遠野莉子

この記事で紹介した書籍ほか

ラーメンを科学する おいしい「麺」「だし」「うまみ」の正体

著:
出版社:
カンゼン
発売日:
ISBN:
9784862554420