ヅカファンにはたまらない!? 35歳女小説家と15歳少女の同居を描くマンガ『違国日記』

マンガ

更新日:2018/5/29

『違国日記』1巻(ヤマシタトモコ/祥伝社)

『違国日記』1巻(ヤマシタトモコ/祥伝社)は、35歳の少女小説家である槙生(まきお)が、両親を交通事故で亡くした15歳の姪・朝(あさ)を引きとる同居譚である。この作品の面白さを一言で述べるならば、「槙生がめちゃくちゃかっこいい!」。天海祐希さんを思わせる切れ長の瞳に、すっと通った鼻筋。なのに、いつも髪の毛はボサボサで人見知りというギャップ萌えもたまらない。そんな美しくかっこいい槙生が15歳の子犬のような少女と、少しずつ仲良くなっていく様子をニヤニヤしながら楽しめる漫画である。

 2人の関係を近づけるのは、槙生が朝にかけるストレートな言葉だ。人見知りの槙生は朝に多くを語ろうとはしない。だが、要所要所で朝の心に寄り添い続ける。

 たとえば、姉夫婦が事故に遭った日に警察で朝を託された槙生。戸惑いながらも朝を連れて帰り、カフェでいち段落ついたあと、槙生は「……悲しい?」と朝に問いかける。うまく答えられない朝は「槙生ちゃんは悲しい?」と逆に質問を投げかける。

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槙生「…嘆かわしいことに全く悲しくない…わたしは姉を嫌いだったから……あなたを気の毒だと思うぶん…それが悲しい…」

朝「(安心した様子で)……わたしが変なのかと思ってた……」

 据わった目で訥々と話す槙生の描写からは、本音で話していることがわかる。もし自分が槙生だったら、どう答えるだろうか。彼女の助けになるようなことを言わなくてはと考えを巡らせ、「姉が嫌いだから悲しくない」などとは到底言えないだろう。だが結果的には本心を話した槙生の言葉によって、朝は悲しめないことへの罪悪感を抱えなくて済んだのだ。また朝の両親のお葬式の日、親戚が朝をたらい回しにしているのを聞いて、槙生は朝に大きな声で言い放つ。

あなたは、15歳の子供は、こんな醜悪な場にふさわしくない。少なくともわたしはそれを知っている。もっと美しいものを受けるに価する

 天涯孤独となった朝を不器用ながらも受けとめる槙生の姿は凛々しく、筆者もキュンとしてしまった。朝はこれを聞いて大泣きし「いっしょに帰る……」と槙生に言う。『違国日記』のなかには、こんな「かっこいい槙生ちゃん」が随所にちりばめられている。設定はシリアスだが、読後感は重たくはない。時おりおいしそうな料理描写を挟みながら、2人のやりとりがコミカルに描かれているのでサクッと読める。

 読み終わってから、また1巻の冒頭を読むと面白い。冒頭には槙生と朝の3年後が描かれている。高校3年生になった朝は当たり前のように料理を作り、その横で槙生は小説を書く。なんでもない日常だが3年前の2人に比べると、明らかにその距離に変化が感じられた。これから朝が本当の悲しみを感じた時、槙生はどんな言葉をかけるのだろう。2巻からの展開も見逃せない。

文=寺田真央