バブル絶頂期からはじまった平成は「女性の消費」がキーワード! 次の時代の消費はどうなる?

社会

更新日:2018/1/31

『平成トレンド史 これから日本人は何を買うのか?』(原田曜平/KADOKAWA)

「平成」の終わりが近づいてきている。のちにこの時代は、どのような時代だったと語り継がれるのだろうか。バブルの崩壊とデフレ。ネットの隆盛と、SNSの誕生…。「平成」の時の流れを知ることは、これからの時代の流れを読む手がかりになるに違いない。

 博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー・原田曜平氏の『平成トレンド史 これから日本人は何を買うのか?』(KADOKAWA)では、平成の消費傾向を振り返ることで、これから先の時代の消費を予想している。原田氏によると、平成という時代を見直すにふさわしいキーワードは「女性」だという。男性が働き、女性が専業主婦として家事や育児に専念することが一般的だった昭和時代、消費の中心は男性にあったが、1986年(昭和61年)に雇用機会均等法が施行されて以降、消費の中心は女性へと変化してきた。

 平成が始まる前後から世間は「自立した強い女性像」を賛美し始めた。バブル期に人気を博したW浅野主演のトレンディドラマ『抱きしめたい!』。結婚相手に求める「三高」(高身長、高学歴、高収入)の条件。「メッシー」(いつでも食事を奢ってくれる人)、「アッシー」(いつでも車で送り迎えしてくれる人)という男性を小馬鹿にした言い方が出てきたのもこの頃のことだ。

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 当時、企業で働く女性のほとんどは「一般職」で、完全に経済的に自立していたとは言い難いが、平成時代の始まりとともに、女性たちの発言権や存在感が急速に大きくなっていった。その後も女性中心の消費は続いていく。

 1990年代半ばには、歌手の安室奈美恵さんを真似た「アムラー」と呼ばれるロングヘア、ミニスカート、バーバリーのブルーレーベル、厚底靴の女子高生の文化がブームとなった。「キティちゃん」「着メロ」「たまごっち」「パラパラ」「プリクラ」など、消費を女子高生が動かしたのがこの時期だ。

 しかし、2000年代半ばごろから、多くの「女性市場」は飽和し始め、もはや「女性」という単純なキーワードだけが支持される甘い時代ではなくなっていった。男性と同じようにバリバリ働いているにもかかわらず、給料は男性の7割くらいにしかならない。たとえば、この頃の作品である安野モヨコ氏の『働きマン』や、ひうらさとる氏の『ホタルノヒカリ』で描かれる女性は、どちらも90年代に描かれたかっこいい「万能スーパーウーマン」像とは異なり、仕事はできるが、プライベートは残念な女性だ。「自立はしたいが、誰かに支えられたい…」。次第に、女性の生きづらさが際立つ世の中となっていく。

 多くの女性市場の飽和が企業サイドにも認識されるなかで、近年、新しい市場を開拓する動きが高まっている。その一例が「中性的な男性」の市場といえると原田氏はいう。2009年に「草食男子」が流行語になったが、この傾向は今も続いており、「レギンス男子」「日傘男子」「イクメン」「弁当男子」など近年話題になったこれらのキーワードからもわかるように、今時の若い男子は上の世代に比べて中性的。昭和の「男の時代」とは異なる「“新しい”男の時代」が始まりつつある。

 これからの時代はどんな時代になるのだろう。どのようなモノが流行し、消費されていくのだろう。原田氏の本はマーケティング担当者必読の書。これからの時代を知るために、ぜひとも手にとりたい1冊だ。

文=アサトーミナミ