『みをつくし料理帖』高田郁も絶賛、あやかしエンタメ隠し玉! 迷える人々に不思議な“玉”を与える老婆、その正体は……?

文芸・カルチャー

2018/2/3

『たまうら~玉占~』(星乃あかり/小学館)

「これぞ“あやかしエンタメ”の隠し玉!」と、『みをつくし料理帖』の高田郁さんも推薦する小説『たまうら~玉占~』(星乃あかり/小学館)。迷える人々が謎めいた老婆の占いに未来を委ね、不思議な力をもつ玉に導かれていく、あやかし時代小説だ。

「〇〇の母は当たる」とか「〇〇神社は縁結びに効く」とか、不確かなものに未来を委ねたくなるのは、みんな不安でたまらないからだ。恋は、努力したからといってすべて報われるわけじゃない。自分に能力がないことを悟っても、与えられた仕事の責任を簡単に放棄できるわけでもない。どうにかしてよりよい未来を手に入れたい。そのために必要な手順と選ぶべき道を教えてほしい。そんな藁をもすがる思いを抱えた人々の前に現れるのが、行燈を掲げて壺を抱えた不思議な“玉占”の老婆である。

 迷い人に、老婆は壺から玉を引かせる。まるでおみくじのようだが、違うのはその玉に本当に運命を変える力があるということ。いなせな男に焦がれるおみつには、縁を引き寄せる“えにし玉”。小物問屋の一人息子なのに記憶力皆無、処置なしと思われている正太には“覚え玉”。日々の暮らしもカツカツで、けちんぼなトメばあさんには“あきあき玉”。それぞれの不安と不満を解消するのにぴったりな玉が、導かれるようにしてその手におさまるのだ。だが玉はもちろんタダじゃない。効果があるとわかったら、1日あたり八文の貸し賃を支払わなくてはいけない。つまり幸運を持続させるためにはそれに応じた対価が発生するというわけである。人生、そうそううまくはいかない。

 しかも玉を得たからといって、すべてが好転するとも限らない。人の欲に限りはない。これさえ叶えばあとはなにもいらないと思っていても、ひとつクリアすれば次にまたさらなる大きな望みが生まれるのが必定。それにどれだけ運が向いても、自分が変わらなければ何も意味がない。

〈こういう手合いは、いつだって未練たらたら、なくした後でくよくよ悩むのさ。大事なものがなんなのかさえ、よく分かっちゃいないんだ〉P30

 貸し賃をとりたてながら、いじわるく老婆は言う。地獄からも門前払いをくらい、人を助け、功徳を積むことで極楽に近づこうとする彼女が、積極的な善意で人助けをしないのはたぶん、人間の愚かしさを知っているからだ。どれだけ手をさしのべられてもそれをいかせず自滅していく姿を幾多も見てきたのだろう。だがふと思う。それでも老婆が玉占をやめないのは、幸運を生かして未来をみずから切り拓いていく人々の姿を見たいからなのではないかと。迷える人々に手を貸すことで、彼女もまた救われて、希望を見出しているのかもしれない。だとしたら老婆の過去にはいったいなにが? と、この物語にますます惹きつけられてしまう。

 玉の力を、幸運を、生かすも殺すも自分次第。なにを幸せと思うかも、自分の決断次第で決まる。読み手の迷いにも光明を与える本書、ぜひともシリーズ化してほしい一作である。