企業リーダーたちから学ぶ、会社も社員も幸せになる方法

ビジネス

公開日:2018/2/2

『あしたのリーダーたち』(高橋恭介、枡田絵理奈:編著/クロスメディア・パブリッシング)

 ブラック企業はもう生き残れないだろう。景気回復による手不足で、経営者にとって人材確保とその活用が大きな経営課題になってきた。また働き手にとっても、より有利でやりがいのある職を求められる状況に変わったことは間違いない。

 本書『あしたのリーダーたち』(高橋恭介、枡田絵理奈:編著/クロスメディア・パブリッシング)は、ラジオ日本のビジネス番組に出演した企業経営者の経営哲学や人材活用のこだわりポイントなどを紹介したもの。経営者にも、そして働き手にも魅力ある職場を考える上で良い参考書になるはずだ。

 著者の高橋恭介氏は、人事評価制度の構築・運用を行うコンサル会社の経営者である。高橋氏は「世界的に下位に甘んじている日本のホワイトカラーの労働生産性は、人事評価制度の機能不全が原因。これを会社と従業員双方の成長ツールと見直せば生産性は向上する。社長や社員が幸せになり、日本が元気になるという循環をつくっていきたい」と意気込む。

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 そのツールのひとつ「コンピテンシー」が本書で紹介されている。これは仕事ができる人の行動特性を、人間性、専門性、組織情報活用、マネジメント、の4分野で指標化したもの。社員の評価と改善のサイクルを回すことによって成長を促すという人事評価制度の要だ。また、自律志向、権限委譲、ビジネスマナー、ユーモアなど、個人と組織を活性化しようとする指標にも着目したい。日本企業にありがちな自律を阻む文化、つまり、権限委譲の希薄さや、上司の顔色や空気を読む仕事の進め方を制度によって改革しようとする著者の意図がうかがえる。

 紹介されている経営者たちの人材活用への思いをいくつか見てみよう。

・関わる人を幸せにする組織文化

 次々と人が去り業績が悪化、破産も覚悟した経営者は、意思疎通の不足が原因ということに行き着いた。経営者も社員同士も互いに影響を与え合う環境を作り上げ、復活を成し遂げた。顧客も社員同士も「関わる人すべてを幸せにする」という意識改革によって成長企業に変身したのだ。

・戦略よりも人の成長に重点を置く

 経営の重点を戦略よりも人の成長に置く経営者は、「数字を上げる指示はしない。力を発揮する仕組みさえ作っておけば、数字は後からついてくる」と確信する。提案すれば誰もがリーダーになれる制度など、まさに自律を促すユニークな取組みだ。

 読み進むほどに、会社に人を集める経営者の共通項が見えてくる。社員が成長することで企業が発展し、また人が集まる好循環を作り上げていることだ。経営者の役割は、ビジネスモデルを洗練させるだけでなく、社員が能力を発揮する環境構築のようだ。

 あなたの上司、経営者、そしてあなた自身は、あしたのリーダーになりうるだろうか?自問に、また、起業や会社選びのヒントにご一読をおすすめする。

文=八田智明