空前絶後の文学的苦行の数々! これが本当の読書だッ!

小説・エッセイ

公開日:2012/2/26

ちくま日本文学全集 夢野久作

ハード : PC/iPhone/iPad 発売元 : 筑摩書房
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:電子文庫パブリ
著者名:夢野久作 価格:864円

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「読む苦行」
…本作品集をたったのひと言で言い表すとすれば、そうなりましょう。収録される珠玉の幻想譚、奇譚の数々は、どれをとってもトビキリ中のトビキリ。とうとうと、あるいはネチネチと綴られる書簡、数奇な人物による一人語り。それらがタダの1つの事実として切り取られ、無造作に読み手の眼前へと放り投げられます。

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奇妙な人物たち。複雑怪奇な作品構造と、それを更に助長する文体。一度読み出したら最後、あぁ、行くも地獄、戻るも地獄(褒めてます)。“マゾゲー”にも似た、読書による苦行こそが、本作の醍醐味なのであります(褒めてますよ)。

収録作は以下…
 ・いなか、の、じけん
 ・瓶詰地獄
 ・押絵の奇蹟
 ・氷の涯
 ・人間腸詰
 ・猟奇歌
 ・謡曲黒白談
 ・杉山茂丸
…ステキに大ボリュームな全集となっております。

この中でもぜひともご拝読いただきたい作品は、なんといっても「瓶詰地獄」でしょう。個人的に、夢野作品で最も好きな短編のひとつです(※漫画界の魔人・丸尾末広先生が、ごく最近に本短編を漫画化されたようで、本当に嬉しく思います)。

本文は、漂流した兄妹が、外界へ向けて放流した瓶詰めの手記によるものです。それらが何の補足や注釈もなく、たったの3編。ただただ無為に羅列されているだけの作品です。

楽園のような島で、兄妹は次第に惹かれ合っていく…というお話が断片的に語られるのですが、そこから立ち上る地獄の臭いが、それはもう尋常ではない。ハッピーエンドでもなく、バッドエンドでもない…まさに地獄をソロリと覗くような読後感は、最高の苦行といえましょう(褒めてますってば)!

今もなお、幻想文学家として、燦然と輝き続ける怪魔人・夢野久作。文学マゾの貴方! ドグラ・マグラもさることながら、ぜひ、それ以外の苦行にも挑戦していただきたい!


見よ、この初心者お断りレベルのネチネチした文章!

ビギナーは猟奇歌からがオススメ、かもしれません

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