高学歴男たちの “見えない恋愛闘争”。「キラキラ男子」と「モサい童貞」、どこで差がついた…?

恋愛・結婚

公開日:2018/2/2

(C)NTV/J Storm

 1月22日に放送がはじまった『卒業バカメンタリー』(日本テレビ)。「偏差値70越えのエリート大学生4人」が大学卒業前に“童貞”を卒業すべく奮闘する青春ストーリーです。今回citrusでは、ドラマで描かれる「童貞」にまつわる解説記事を公開。ドラマを深く味わうためのヒントをcitrusオーサーが提供します。

~『卒業バカメンタリー』連動企画~
高学歴男たちの“残念すぎる”恋愛事情

<あらすじ>エリート大学生のガク(藤井流星)・マオ(濵田崇裕)・コウキ(前田航基)・ジュン(吉田靖直)は卒業を目前に、自分たちの「女っ気のなさ」に愕然とする。焦った4人は「男だけでつるむ毎日」からの脱却を決意。自称プレイボーイの清掃員・タムラ(新井浩文)のアドバイスも受けながら、もう一つの“卒業”に向かって全力でスタートダッシュを切る…。

advertisement

 今回ご登場いただくcitrusオーサーは、エッセイストの潮凪洋介さん。ドラマのテーマにあわせて、高学歴男性の恋愛事情を解説します。

■「頭も良くて、女にモテるヤツ」も実在する…

(C)NTV/J Storm

 高学歴男性は恋愛に疎い――これはいわずもがな誰しも想像できる。厳密に言うと、「10代~20代前半までは」という但し書きがつく。もっと厳密に言うと、「10代~20代の高学歴男性は恋愛格差が大きい(とくに私立難関大学においては)」。

「格差」と書いたが、10代でも学力偏差値、恋愛偏差値ともに「お高い」男子はいる。「なぜ早慶のキャンパスにあんな派手やかな集団がいるのか?」と感じたことのある読者は多いだろう。あの面々は高校時代に“すべて”を経験済みだ。GMARCHに関しても同様。かくして、「18歳にして超ハイレベル女子(偏差値ではなく女の魅力として)との恋愛三昧で百戦錬磨のキラキラ艶男子」と「童貞臭プンプンのモサい少年」が同じキャンパスで学ぶ、不自然な光景が現れる。

「百戦錬磨のキラキラ艶男子」はどんな中高時代を送ってきたのか。彼らはたいてい、小学校高学年時分に懸命に勉強し、系列の難関大学に推薦で入学できる難関私立中学に合格している。例外もあるが、その割合は多い。12歳前後で、大学受験よりもさらに過酷な受験戦争を戦い抜いた彼らは要領も地頭も良い。だから、遊びもできる。ファッションも楽しめる。ゆえに恋も上手く、女と戯れることに抵抗がない。勉強も恋も即結果につなげるのだ。

 つまり、彼らは「何も持っていないから勉強に逃げるしかないガリ勉タイプ」と種類が違う。共学校に在籍していれば、そんな男子を女子が放っておくわけがない。たとえ男子校でも、学外活動中に女子が飛びつくのである。

■童貞18歳はキャンパスの“環境”を見誤る

「百戦錬磨キラキラ艶男子」と「ガリ勉童貞男子」――この両者がキャンパスで混ざる不自然な光景。私大に通っていた人なら心当たりがあるはずだ。これぞ、「私立難関校の恋愛格差」である。中には奮起して、“大学デビュー”を果たす「ガリ勉童貞男子」もいるが、なかなか大学デビューできない人もいる。恋愛できる環境が“枯れた”キャンパス、潤沢なキャンパスがあり、学内でいくら頑張っても成果が出せないケースがあるからだ。

 しかし、それを知らない奥手男子は、枯れ果てた学内で恋人を探す。もちろん相手など見つかるはずもなく、この手の男子の青春は「枯れたまま」だ。思い返せば、私の母校・早大も「恋愛枯れ」した土壌であった。付属上がりのおしゃれ女子がいる青学や立教、法政がうらやましかった。もちろん、私の主戦場は学外だったので、“無問題”だが、授業中の講義室やキャンパスは男子校の雰囲気だった。「内部になければ外にいく」は鉄則である。最近、母校で講演したが、昔より良くなったとはいえ、やはり「幼い感じ」は早大の特徴でもあった。

■恋愛という窓からのぞく学歴社会の“ひずみ”

「偏差値70越えのエリート大学生4人」が卒業前に“童貞”を卒業すべく奮闘するドラマ『卒業バカメンタリー』(日本テレビ)のストーリーと同じく、一部の高学歴童貞は失った青春を取り戻すべく行動に出る。これは自然なことだろう。大学デビューは、学生時代に勉強しなかったヤンキーが急に勉強を始めたり、資格をとるために学んだりするようなもの。厄介なのは、大学デビューできずに諦めモードとなり、その世界で変なプライドを持ち始める男子だ。

 このあたりが就職後、恋愛経験豊富な「リア充女子」と仕事で絡んだとき、「こじらせ事件」を起こすことがある。人生観、恋愛観、価値判断の基準、コミュニケーション手法がまったく異なるからだ。職場で「こじれ」を作るだけでなく、恋愛方面だと「ストーカー事件」に発展することも。仕方のないことだ。日本には恋愛の義務教育も、テストも、課外授業もない。異性を真剣に知って学ぶ機会が10代の教育から抜け落ちているのだから。“独学の責任”はすべて本人たちにある。

 童貞の期間が長く、コンプレックスと疎外感をたっぷり蓄積したまま一流企業に入った男の一部は、その恨みを晴らすかのように迷惑行為に出る。企業の肩書きでモテると気づき、その肩書きをひけらかしながら社外で女性を口説く。あなたもどこかで見かけたことがあるだろう。自分に自信はないが、学歴と所属企業には自信がある。それを言うと相手にしてもらえる。女性には、「トークがつまらなく、自慢が多く、気持ち悪い」という感想を持たれがちだ。もちろん、一流企業の人全員がそうではない。歪曲したアイデンティティを持つ「ガリ勉童貞」からの「遊び人デビュー男」がこうなる傾向が強いというだけだ。

 もう一つ。相手を騙す形で「付き合おう」と口説き、「食い逃げ」する男も多い。要は、「遊びだけど楽しもうよ」というスマートな自由恋愛ができない。遊んでこなかったので女ゴコロがわからない。自分の欲望を満たす思考しかなく、このような“乱獲”をしてしまう。学歴社会のひずみだ。

■恋愛や女遊びの“イロハ” 子どもに教えてますか…?

 もちろん、学生時代に童貞だった人全員が「こじらせる」わけではなく、童貞が「悪い」とも思わない。ただ、私は声を大にして言いたい。親も社会も、生きることを愉しむ術をもっと子どもに教えるべきではなかろうか? そのためにまず、大人も生きることをきちんと愉しむ。各自、働き方を改革する。「人生100年時代」に備え、「本当に好きな仕事って何だろう」と考え、社外で準備を始める。ロマンを追う。そうでもしないと、子どもたちは恋愛を含めた生きることを愉しむ術を身につけられない。

 勉強も頑張れ!楽しむことも頑張れ! あなたが親なら、子どもにそう伝えよう。たとえば、女の子を呼んでホームパーティをするよう促すのもいい。あるいは昔とった杵柄、あるいは今とっている杵柄で、子どもを繁華街に連れてゆき、恋愛や女遊びの“イロハ”を教える。そんなお父さん、お母さんを目指してみてはどうだろうか?

 10代から“経験豊富”だった方なら、恋愛の重要性が分かるはず、奥手だった方は、自分が味わった苦しみを子どもに経験させたくないと感じるだろう。そういう人こそ、自分と同じ轍を踏まないよう早めに失敗談をレクチャーし、恋愛させるのだ。『卒業バカメンタリー』を一緒に観て、勉強するのもいい。どうするかはあなた次第。子どもたちに明るく、忘れがたき青春のヒントを与えてあげましょう。それも、私たち大人が施すべき教育の1つではなかろうか。

月曜深夜ドラマ

『卒業バカメンタリー』
毎週月曜深夜 24:59~25:29
<出演>
藤井流星(ジャニーズWEST)
濵田崇裕(ジャニーズWEST)
前田航基
吉田靖直
新井浩文 ほか
<スタッフ>
脚本:じろう(シソンヌ)
音楽:上水樽力
企画・演出:橋本和明
監督:中尾浩之(P.I.C.S)
チーフプロデューサー:福士睦
プロデューサー:大倉寛子 長松谷太郎(ジェイ・ストーム) 平賀大介(P.I.C.S.)
制作プロダクション:P.I.C.S.
製作著作:日本テレビ/ジェイ・ストーム
HP:http://www.ntv.co.jp/bakamen/

文=citrus エッセイスト 潮凪洋介