『アメトーーク!』で大反響! カズレーザーお薦めの「実験的小説」とは?

文芸・カルチャー

2018/2/3

『残像に口紅を』(筒井康隆/中央公論社)

「読書芸人」発の書籍ブームが続いている。2017年11月に放送された、テレビ朝日系バラエティ番組『アメトーーク!』では、「本屋で読書芸人」として、読書家として知られる芸人たちがオススメの本を紹介。紹介された本が日本全国で品切れ続出するという事態になり、放送から2ヵ月以上経った今もその売り上げは好調だ。なかでも、お笑いコンビ・メイプル超合金のカズレーザーが紹介した筒井康隆氏の『残像に口紅を』は、読書家たちだけでなく、普段、本を読まない人の心をも動かした一冊。平成のはじめに単行本として刊行された本が、30年近くの時を経て、再び脚光を浴びている。

 普通の小説だと思ってこの本に手をつけると、驚かされることになるだろう。この本は「実験的な小説」。「世界から『あ』を引けば」からはじまり、物語世界では、章を経るごとに小説のなかで使える50音の「音」が少しずつ減っていく。そして、音が消えると、その音が入った単語がすべて物語世界から姿を消していってしまうのだ。

 たとえば、「あ」が消えた世界では、主人公の妻は夫に「あなた」と呼びかけることができず、「ごめんなさい」だとか「もしもし」と呼びかける。二人の間には、「愛」もなくなってしまったのか、どこかギクシャクしていて気まずい雰囲気だ。「ふ」という音が消えると、「フランス料理」のお店は「どこの国だか記憶にない欧州料理店」となり、ステーキを切る道具も消えて、料理店では箸が出される。さらには、消えた「音」が名前に含まれる娘も姿を消した。だが、主人公には、どの「音」が消えたのかはわからない。あとに残るのは、何かが失われてしまったという喪失感だけだ。

「彼女の化粧した顔を一度見たかった。では意識野からまだ消えないうち、その残像に薄化粧を施し、唇に紅をさしてやろう」

 物語世界は「音」が消えていけばいくほど、あらゆるものが姿を消し、どんどん不自由になっていく。しかし、「音」が減っても、物語は巧みに紡がれ続ける。音が減っていることに気づかせないほどの筒井氏の語彙、表現力の豊かさはあっぱれ。使える言葉が数個になっても、きちんと物語になっていることに感嘆させられる。とはいえ、終盤は、使える音があまりにも少なく、ラップ・ミュージックのような調子で紡がれることになる。

解体。がたがたがた。がたん。
堅い板が、がん。がん。
いたたたた。胃が。肩が。

 ひとつひとつ「何か」が失われていく悲しみと切なさ。それでも「音」が減っても物語が紡がれていくことへの感動…。こんな不思議な読後感を味わえる小説は他にあるまい。この小説は、冨樫義博氏著の漫画『幽遊白書』に登場する能力の元ネタにもなった作品だという。読めば読むほど、この本が長い間、多くの人に親しまれてきた意味がわかるような気がする。小説好き以外も、この物語の面白さにハマるのも無理はない作品。

文=アサトーミナミ