長澤まさみ&高橋一生共演の話題作! 5年の同棲、愛する人のすべてが嘘だった時、あなたはどうしますか?

文芸・カルチャー

更新日:2018/2/5

『嘘を愛する女』(岡部えつ/徳間書店)

 嘘とは何なのか。それは、真実が変装した姿にすぎないのかもしれない。嘘を見つめ続ければ、必ず真実が見えてくる。そこには、相手を欺かざるを得なかった思いがある場合もあるのではないか。だが、嘘をつかれた側としては、そんな風に悠長には考えられない。裏切りとみなし、取り乱して疑心暗鬼に陥っていって当然だろう。

 たとえば、愛する人のすべてが嘘だった時、あなたはどうするだろうか。岡部えつ氏の『嘘を愛する女』(岡部えつ/徳間書店)は、5年もの間同棲していた恋人に、名前はおろか職業、出身地まで、嘘をつかれていた女の葛藤を描き出した傑作ラブストーリー。2018年、長澤まさみ高橋一生主演で映画化され、現在も大ヒット公開中の話題作の小説版だ。どうして恋人は自分に嘘をつき続けてきたのだろう。何を信じたら良いかわからぬまま、彼の真実の姿を求める女の姿はあまりにも切ない。隠されていた事実が明らかになった時、その真実の愛の姿に誰もが思わず涙を流すにちがいない。

 主人公は、大手食品メーカーに勤めるキャリアウーマン・川原由加利。研究医でとても優しい恋人・小出桔平と同棲5年目を迎え、結婚を意識していた由加利は、桔平と自分の母親に会わせることにした。しかし、その日、桔平は会場には姿を現さなかった。不誠実な態度に苛立ちを抑えられない由加利だったが、病院からの突然の電話で、彼がくも膜下出血で倒れ意識を失ったということを知る。慌てて病院へ向かうと、彼の所持していた社員証が偽物であり、職業はおろか名前すらも「嘘」という事実を知らされた由加利。なぜ桔平はすべてを偽り、由加利を騙さなければならなかったのか。由加利は探偵を雇い、真実を探ろうとする。やがて、見つかる、桔平が書いた書きかけの小説。彼の正体を探る旅の果てに彼女はどんな真実を知るのだろうか。

advertisement

 5年間、同じ屋根の下で暮らしていた由加利と桔平。桔平は毎日横浜の大学病院へ通っていたはずだが、倒れていたのは新宿。どうしてそこにいたのかもわからないし、そこで何をしていたかもわからない。由加利は、彼はどんな思いで自分の側にいたのか途端にわからなくなる。2人の間には愛など存在しなかったのか。桔平と過ごしてきた温かい日々を思い出すたび、由加利はその思い出に苦しめられていく。

 おまけに、由加利は桔平の「家族」ではない。病院は、「家族でないと、治療の説明を聞いたり、同意書に署名したりすることはできない」というし、親友は、由加利を思うが故に、「人生を棒に振るようなことをしないで」と彼の面倒を見ることや治療費の支払いをすべきではないという。5年間ともに過ごしてきた時間は何だったのか。由加利は虚無感に苛まれていく。そして、彼と過ごした日々の意味を知るため、彼自身を知るため、彼の本当の姿を追い始める。

 映画で長澤まさみ高橋一生がどんな演技を繰り広げているのかも気になるところだが、小説と映画は展開が異なるというのだから、ぜひとも見比べたい。桔平は何者なのか。なぜ彼は嘘をつくことになったのか。あまりにも切ない嘘の物語は映画でも小説でも、あなたの心を震わせるにちがいない。

文=アサトーミナミ