超カンタン! 「転職」「就職」「将来設計」に差がつく決算書活用法

ビジネス

公開日:2018/2/3

『100分でわかる! 決算書「分析」超入門2018』(佐伯良隆/朝日新聞出版)

 終身雇用が揺らぐ昨今、よりよい待遇や職場環境を求めて、転職する人が増えている。業績の良い企業に入りたいし、東芝のような「大手だけど実はお先真っ暗……かも」という企業は避けたいところだ。これは就活生もまったく同じことが言える。

 こういった情報はウワサで知ることもできるが、もっと確実な方法がある。その企業の「決算書」を読み解くのだ。「決算書? いやー分かんないよ」という読者もいるだろうが、ある程度ならば意外と簡単に読めてしまう。企業の特長もよくわかるので、転職や就職活動をする人や株などの投資を始めたい人は、是が非でも読めるようにしておきたい。

 そこで、決算書を読むコツを「人の体」にたとえて分かりやすく解説した『100分でわかる! 決算書「分析」超入門2018』(佐伯良隆/朝日新聞出版)より、決算書の概略をちょこっとだけご紹介しよう。

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■決算書が持つ2つの役割

 決算書には大きく分けて2つの役割がある。1つは、1年間の「成績表」。決算期に(=1年間に)その会社が「何をして」「どれだけ成果(=儲け)をあげたのか」が記されているのだ。スポーツ選手が1年間頑張った成績を発表しているイメージ。

 そしてもう1つは、会社の「健康診断書」。見かけが大きくて頑丈そうな会社でも、実は体の中はボロボロ(売り上げが落ちて赤字になっている)なことがある。決算書を見れば、外側からは分からない会社の「体の中の状態」まで知ることができる。

■「成績表」と「健康診断書」を読み解く3つの表

 それでは、その会社の「成績表」と「健康診断書」を知るためにはどうすればいいか。実は簡単だ。たった3つの表、「損益計算書」「貸借対照表」「キャッシュ・フロー計算書」を読めばいいのだ。

 まず「損益計算書」とは、「売上(=モノやサービスを売って得たお金)」から「費用(=会社から出ていったお金)」を引いて、最終的に得た「利益(=儲け)」が書かれた表のことだ。

 次に「貸借対照表」。これには、「財産(=現金や原材料、土地、建物などの資産額)」と、それらを入手するためにかかった「元手(=銀行からの借入金や資本金)」が記されている。この貸借対照表を読み解くことで、会社がどんな体つき(財産)をしていて、それを支える骨格(元手)がどうなっているかがわかる。

 貸借対照表は「資産の部」「負債の部」「純資産の部」の3つに分かれており、本書ではこれらをそれぞれ、「資産=体つき」「負債=借り物のロボットスーツ」「純資産=骨格」と、人の体に割り当ててイメージしやすい解説をしている。

 これならば、「人と同じように、会社も優れた体つき(資産)であれば、大きな運動成果(利益)を上げることができるんだな」とか、「純資産や負債は、会社の体つき(資産)を支える土台のような役割を果たしているんだな」とか、人の体のイメージと結びつけて理解することができるだろう。

 最後に「キャッシュ・フロー計算書」。これは文字通り、「現金(キャッシュ)の流れ(フロー)」を示したものだ。会社にとって、現金は命をつなぐ「血液」そのもの。たとえ利益を出していても、血液が足りなかったり、ドロドロで流れなくなったりすれば、体調が悪くなってそのうち倒れて(=倒産)しまう。いわゆる黒字倒産というやつだ。「キャッシュ・フロー計算書」は、「損益計算書」では見えにくい現金の量と流れを表しているので、出血(=現金が流出)や貧血(=現金が足りない)という異常も察知できる。

■東芝は骨が溶けきってよろよろ?

 ここまでの内容は本書の導入部分。ここから本書は、「損益計算書」「貸借対照表」「キャッシュ・フロー計算書」の具体的な読み解き方を、人の体でたとえながら、図を使って分かりやすく解説している。

 さらに本書の最後には、話題の企業の決算書を実際に読み解き、その成績と健康状態を詳しく見ている。「任天堂は身体能力が低く、脂肪も多いが、業績は回復しているんだな」とか、「東芝は骨が溶けきってヨロヨロなんだ」とか、「ソフトバンクはものすごいロボットスーツを着ているね」とか、企業のキャラクター性がつかめて面白い。

 こういったキャラクター性は、企業の状態と直結しており、決算書を読み解くことで、その将来性もおおよそわかるようになる。このスキルは投資などに役立つのはもちろん、面接で「決算書を拝見しました」というと一目置かれるだろう。興味ある方は、本書を手に取ってみてはいかがだろうか。

文=いのうえゆきひろ