カズレーザーが15年ぶりに泣いた! たった6行で泣ける「最終話」【『アメトーーク!』で大反響】

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2018/2/11

『妻に捧げた1778話』(眉村卓/新潮社)

 大人になればなるほど、胸を打たれるような感動を覚える機会は失われていく。しかし、この本は、多くの大人たちの心を強く動かすに違いない。SF作家・眉村卓氏の『妻に捧げた1778話』は、今話題の「愛妻本」。2017年11月に放送された、テレビ朝日系バラエティ番組『アメトーーク!』の企画「本屋で読書芸人」でカズレーザーが「15年ぶりに泣いた」「最終回の1778話だけでも泣ける」と大絶賛。その場で「最終回」だけを読んだ光浦靖子も「うわーもうダメ、泣ける、すぐ泣ける」と目に涙を浮かべていたことで注目を集めている本だ。

 1997年、眉村氏の妻・悦子氏は、癌を患い、「余命一年」を宣告された。何か自分にできることはないだろうかと考えた時、眉村氏が思いついたのは、毎日一日一話ずつショートショートを書いて妻に読んでもらうことだったという。元来本が好きな妻は、毎日読んでくれた。こうして、病気の妻を読者として眉村氏はショートショートを書いていった。そして、2002年5月、妻が永眠し、1778本目として「最終回」を書くまで、眉村氏は妻を思いながら作品を生み出し続けた。『妻に捧げた1778話』は、眉村氏のショートショート19編と悦子氏との思い出が綴られた作品だ。

 ショートショートの間で紡がれる悦子氏との思い出を描いたエッセイも魅力的だ。たとえば、入院中、悦子氏が突然「お葬式はどうするの?」と尋ねてきたことがあったという。そして、「わたし、してもらいたいことがあるの」とベッドに半身を起こし、「お葬式の名前は、作家眉村卓夫人、村上悦子にしてほしい」と言った。「自分の名前だけでは誰のことかわからない人も多いだろうから」という理由をつけていたが、悦子氏の本心は、眉村氏とともに人生を過ごし、ずっと協力者であったことを証明したいということにあったのだろう。「必ずそうする、駄目だと言われたら、そうしてくれる葬儀会社をどんなことをしても捜す」と眉村氏は約束し、妻の希望を実現させたそうだ。

 悦子氏はいつも眉村氏のことを考えていた。亡くなる前年、家族で松尾寺を詣でた際、祈願の札に、「『病気平穏』と書け」と眉村氏が言っても、悦子氏は眉村氏のことを思って「文運長久」とだけ記した。眉村氏は、妻が自分の協力者であることに自負心と誇りを持っていたのではないかと振り返る。そして、悦子氏の支えがあったからこそ、今の自分がいるのだという思いをエッセイに表している。

 ショートショート1778話の「最終話」は涙なしでは読むことができない。6行にこめられた強い愛情に、涙腺が緩むのは当然のこと。最後の原稿の最後の行に眉村氏は「また一緒に暮らしましょう」と書いた。こんな素敵な「最終話」が他にどこにあるのだろうか。

 大人になればなるほど、愛というものがだんだんと信じられなくなる。だが、眉村氏と妻・悦子氏の関係を見ていると、こんなにも温かな繋がりがあるのだと、互いが互いを想い合う美しさを見せつけられたような心持ちにさせられる。死が2人を分かとうとも、2人はずっと互いを想い合い続けるに違いない。2人の強い結びつきに、そんな確信すら覚えてしまう名作だ。

文=アサトーミナミ