「女子力」「加齢臭」「リア充」——世界を変える「ことば」の力とは

社会

2018/2/14

『欲望する「ことば」 「社会記号」とマーケティング(集英社新書)』(嶋 浩一郎・松井 剛/集英社)

 新しい「ことば」は常に生まれている。それは、雑誌やテレビCM、近年はネット発のものもある。それらの多くは、一時的な“流行語”で終わってしまうが、時としてその時代を象徴した、人々の心に刺さる「ことば」が生まれ、一般に広がり、立派な日本語の「ことば」として社会的に認知されるようになることもある。

『欲望する「ことば」 「社会記号」とマーケティング(集英社新書)』(嶋 浩一郎・松井 剛/集英社)は、広告会社で長年にわたり商品として「ことば」を扱ってきた嶋氏と、マーケティングを専門分野とする大学教授の松井氏の共著だ。立場の違う専門家のふたりが各々の独自の切り口で「ことば」について語る。

■「社会記号」の誕生と成長

「社会記号」とは、それが生まれたときには辞書に載っていない造語であるが、やがて広く知られるようになり、テレビや雑誌でも普通に使われ、人々の日常会話の中に溶け込んで見聞きされるようになることばのことをいう。著者のひとりである嶋氏の広告会社で用いられてきたことばだ。いくつか例を挙げよう。


できちゃった婚
公園デビュー
女子力
草食男子・肉食女子
婚活
イクメン
セクハラ・パワハラ など

 これらの新しいことばの概念は、潜在的には既に存在していたものだ。それらに名前を与えて顕在化させることによって、「社会記号」となり、マスコミ媒体などを通じて人々に知られるようになる。その過程はこうだ。

■「コギャル」という社会記号の場合

 まだ名前(社会記号)を与えられていないコギャルの存在→ことばができる(コギャルと命名)→ 肯定的な自己確認(本人たちの意識の変化)→あこがれ、フォロワーの出現(コギャルになりたい!という人の出現)→周囲の寛容な態度(コギャルの存在の認知)→文化(若者文化、日本特有の文化)

■言語化できない欲望

「社会記号」は世の中の変化を先取りして表す象徴的なことばあり、また、人々の欲望の暗黙知が反映されている側面もある。

 ひとり焼肉、ひとりカラオケ、ひとり旅など、ここ数年で定着しつつある「おひとりさま」。これも、煩わしい他人と一緒に行動するより、ひとりで自分の好きなようにしたいという、実は意外に多くの人が抱えていた欲望と「社会記号」がうまく合致した例だ。

 このように、消費者ニーズのあるところに社会記号が生まれる。しかし、誰も気づいていないときにこれらのニーズを見つけ出すことは容易ではない。キーになるのは、日常の中のちょっとした違和感に敏感になることだ。「おひとりさま」の例では「最近、ひとりで行動している人が増えたな」という違和感が「おや? 以前と違うぞ」という気づきに繋がり、顧客層を絞ったマーケティングへと発展していく。

 今こうしている間にも、目に見えない「社会記号」のタネは、私たちの周囲にあふれているのだろう。宝探しの気分で、意識して探してみるのも楽しいかもしれない。

文=銀 璃子