伊坂幸太郎作品、初の連続ドラマ化。『連続ドラマW バイバイ、ブラックバード』。原作者が「ベストの解答!」と絶賛した、その見どころとは?

エンタメ

2018/2/16

 韓国でリメイク版が現在公開中の『ゴールデンスランバー』や、本格ミステリー映画の金字塔『アヒルと鴨のコインロッカー』など、伊坂幸太郎の小説は映像化作品も面白い。2月17日(土)よりWOWOWで放送開始となる『連続ドラマW バイバイ、ブラックバード』は、同名小説(双葉文庫)の映像化。伊坂にとって、初の連続ドラマ化だ。

原作に忠実なドラマ版が付け加えた「一瞬」と「一瞥」

 五股をかけていた星野一彦が、体も態度もばかでかいニセの婚約者・繭美を伴って、付き合っていた女性たち一人一人への「さよなら」の行脚を始める——。『連続ドラマW バイバイ、ブラックバード』は、伊坂幸太郎の原作小説が採り入れていた全6話の「連作短編」形式をそのまま、全6話で「連続ドラマ」化している。

 と、その一点を取っても明らかなように、本ドラマはとことん「原作に忠実」だ。例えば、脚本。冒頭で紹介した2作の伊坂映画も手掛けた鈴木謙一は、カギカッコだけでなく、地の文の中で語られているセリフもピックアップ。モノローグは極力排除しつつ、小説の文章(文体)をできるだけ活かした会話劇に仕立て上げた。森義隆監督(『ひゃくはち』『宇宙兄弟』『聖の青春』)は伊坂ワールド初挑戦となるが、設定上は悲しい物語なのに、居心地の良さを感じさせる時空間の創出に成功。それって、伊坂作品の持つ魅力そのものだ。

 俳優陣も素晴らしい。軽快なおしゃべりで相手の心を開く、天然無自覚な人たらし。この人が嘘をつくとは思えない……と女性達に思わせる、誠実なオーラを放つ星野役の高良健吾。彼の眉間のシワと下あごのシワ(美容用語で「梅干しジワ」)に、同情心をあおられない人はいるだろうか? 婚約者役として星野の別れ話にイヤイヤ付き合い、相手女性に暴言の限りを尽くす「怪獣女」こと繭美役の城田優もすごい。嫌われても仕方ない存在なのに、なぜか愛せてしまうのだ。金色の耳かきで耳をほじる時、つまり神経が手と耳に集中し、黙っていれば本当に綺麗に見える(※城田優本人は、男性です)。

 OLの廣瀬あかり(石橋杏奈)。シングルマザーの霜月りさ子(板谷由夏)。元気娘の如月ユミ(前田敦子)。乳癌の恐怖を抱えた神田那美子(臼田あさ美)。トップ女優の有須睦子(関めぐみ)。五人に「さよなら」を告げる物語は、彼女達の寂しさを探り当て、それを少しだけプラスに変える物語でもある。そのために、〈星野〉と〈繭美〉のでこぼこコンビが奔走する物語。コメディが香り立つ会話劇であり、伏線が効きに効いたミステリーであり、伊坂作品では珍しい恋愛小説的要素もあり……。

 ところで、五股男の星野一彦が「さよなら」を告げにいく女性は5人なのに、全六話だ。残りの一話は? 限りなく「原作に忠実」な本ドラマは、残りの一話、最終第六話の冒頭で、原作にはなかったエピソードを挿入する。それはこのドラマ全体を見渡した時、「一瞬」と呼ぶべきささやかな出来事の記憶だ。物語の本筋に関わるものではまったくないが、観客の記憶に滑り込み無意識を刺激する。そして訪れる、ラストシーン。小説という表現ジャンルにはできなくて(苦手で)、映像という表現ジャンルにはできる(得意な)もの。それは、顔の表情の描写だ。原作小説ではセリフとアクションのみで描き出されていた、ある登場人物の「一瞥」、目玉の凄味が、観客に爆発的な感情を引き起こす。「僕ね、映画でも小説でもなんですけど、登場人物に対して『行けー!』って心の中で思うような瞬間が大好きなんですよ」(『バイバイ、ブラックバード』単行本刊行時の伊坂のインタビューより)

 登場人物が叫ぶ声ではなく、読者や観客が登場人物に対して心の中で叫ぶ「行けー!」の声。その声を極限まで高めるために、ドラマ版で付け加えられた「一瞬」と「一瞥」。それまで見続けてきた全六話の記憶が一挙に蘇り、耕されてきた無意識が感情(「行けー!」)へと転化する、奇跡の感触をより深く濃く味わうためにも。第一話から丁寧に見つめて、楽しんでみてほしい。

文=吉田大助

●放送情報
『連続ドラマW バイバイ、ブラックバード』(全6話)
2月17日(土)より、毎週土曜22:00~WOWOWにて放送
*第1話無料放送
http://www.wowow.co.jp/dramaw/bbbb/