小泉今日子「古いロールモデルしかなかった50代を変えたい」

エンタメ

公開日:2018/2/17

『小泉放談』(小泉今日子/宝島社)

 今、小泉今日子は何を思うのか。2月初旬、公式サイトで行われた、所属事務所からの独立と、俳優・豊原功補との不倫の発表。報道陣の取材に対する「自分の罪は自分で背負って生きていきます」という言葉。その姿に「不倫を公表するなんて非常識」との批判もあれば、「キョンキョンらしい」「潔い」などという声も根強くある。どうして多くの人が小泉今日子にこんなにも惹きつけられてしまうのだろう。そして、彼女の内奥には何があるのだろうか。

 そんな彼女の「これから」に迫る本がある。『小泉放談』(宝島社)は、2016年2月に50歳の節目を迎えた小泉今日子が、人生の先輩たちとともにこれからのオンナの生き方を考える対談集。刊行後すぐに重版が決まり、発売から2カ月あまりがたった今でも人気を呼び続けているヒット作だ。対談相手は、YOU、樹木希林、美輪明宏、渡辺えり、小池百合子ら25人。女優から小説家、漫画家、編集者、バー経営者など個性豊かな先輩たちと、小泉今日子は仕事や家庭、健康、親の介護、子育て、異性関係などあらゆる問題を抱える50代の生き方について語らい合っていく。

「今まで古いロールモデルしかなかった50代を変えたいなぁと思って……。いろんな人に話を聞いて、あとから歩いてくる人たちが、『そうかその手でいけばいいんだ』っていう、参考になればいいなと」

 対談のなかで小泉今日子はそんな言葉を口にする。思えば、アイドル時代からそうだったのかもしれない。三姉妹の末っ子として生まれ、父親の仕事のことで一家離散したのち、親や姉たちの足手まといになるものかと、アイドルになったという彼女は、どこか、他のアイドルとは違い、確固たる自分を持って、時代を切り開いてきた。しかし、そんな彼女ももうアラフィフ。これからの人生をどう生きるかをあれこれ考える姿もこの対談の中からはうかがえる。

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「50になった時、なぜかふと『女の人として生きたいな』と思ったんです。40代は、そういうことはちょっと脇に置いて、仕事を頑張るのがカッコイイと思ってきたけど、もう少し、女性らしさを取り戻していけたらって」

 特に、プライベートでも仲の良いYOUとの対談は、今の騒動を想像させるようで、ハッとさせられる。

(YOU) 普段はいちばんしっかりしているのに、案外、とんでもない事件とか起こしそうなのが今日子。
(小泉) 私、やる時はやるんで(笑)。何かねぇ、間違えるとおとこ気が出ちゃうっていうか。「ここは私が!」と思ってやっちゃうところ、あるんです。
(YOU) 手堅いのかダメなのか、わからないですよ、この子は(笑)。危ない危ない。もうちょっと立ち回れるようにしないと…。

 また、この本は、小泉今日子を知ることができるだけでなく、「50代の指南書」としても面白い。大人たちの対談をこっそり覗きみては、時折、ズバリと出てくる名言に胸打たれる。

「幸福も不幸も、全部が表裏一体だということをわかっちゃえば、これはもう、おもしろいのよ」(樹木希林)
「起こったことは必然だったんだ。だから、すべていいことだ」(平松洋子)

 小泉今日子と語り合う先輩たちの息遣いがすぐそこに聞こえてくる。更年期障害などでふさぎ込むこともある50代。しかし、どの対談相手も、それを乗り越えれば、今までよりずっとラクで明るい日々が待っていると語る。

 変わっていくこと。変わらないこと。変えたいこと…。小泉今日子の葛藤が感じられるこの本は、小泉今日子ファンにもそうでない人にもオススメ。歳をとることが楽しいと思えるあたたかい一冊だ。

文=アサトーミナミ