1年でJ1復帰! 名古屋グランパスを変えた風間監督の“コミュニケーション術”

ライフスタイル

2018/2/22

『伝わる技術 力を引き出すコミュニケーション(講談社現代新書)』(風間八宏/講談社)

 Jリーグの名古屋グランパスを指揮する、風間八宏監督の書籍『伝わる技術 力を引き出すコミュニケーション(講談社現代新書)』(講談社)が刊行された。2012年から指揮した川崎フロンターレでの5年間、その後、1年間で名古屋グランパスをJ2から昇格させるまでの裏話を交え、コミュニケーションを軸とした人を動かすための秘訣を教えてくれる。

■人のせい、物のせいにするのは逃げていることと同じ

 川崎フロンターレや名古屋グランパスだけではなく、風間監督はこれまでに筑波大学や桐蔭横浜大学でも選手たちを指導してきた。チームの選手たちを率いる上では「シーズンの始めに、選手たち一人ひとりと面談をする」こともあると述べるが、その目的は「彼らが何をしたいのか、どうなりたいのか、その希望をしっかりと聞いておく」ことにあるという。

 面談を通して、みきわめられるのは個々の選手が「自分自身と向き合っている」のかどうか。それこそが人間としての基本だという風間監督は「人のせいにするな、物のせいにするな。それはラクだが、逃げていることと同じ」であると説く。

 また、監督の仕事は8割が「選手に何をどう伝えるか」だと述べる風間監督は、面接で希望を聞く理由を「人のせい、物のせいにして逃げようとする選手たちに、ひとこと言うだけで済む」からだと語る。これは頭ごなしに感情的に部下や後輩を叱る人たちにはとりわけ肝に銘じてほしいところだが、たとえ怒る場面でもあっても「相手の人格、尊厳は否定しない」のだそうだ。

 例えば、選手たちを指導するにしても「お前はダメだ!」というのではなく、「お前の仕事はダメだ!」と言うべきだと唱える風間監督。「否定してもいいのはプレー(仕事)だけ。仕事の問題として指摘していれば、感情論ではなくなる。感情がもつれていては、伝わることも伝わらない」という一つの原則を示している。

■あえて“伝えない”ことで考える意識を養う

 何からどう“伝える”べきかは、どんな場面でも悩ましい問題だ。それがましてや先輩や上司の立場から、後輩や部下へ伝えるという仕事の場面では、なかなか正解も見つかりづらい。

 川崎フロンターレでの指導者時代を振り返る風間監督は、初年度にクラブから「チームを変えたい」とオファーをもらった当時、まず「伝えないこと」から始めようとしたのだそうだ。

 シーズン途中に指揮官となった風間監督は、就任翌日から練習へと参加した。そこである日、トレーナーから告げられたのはある選手が「内転筋が痛い」と言っていたということ。それに対して、風間監督は「サイドキックで痛いというならサッカー選手やめちゃえよ」と返して、補強運動をやらせなかったという。

 一見、とんと突き放したかのような発言にも思えるが、そこにはやはり風間監督ならではの意図がある。端的にいえば、その目的は考えさせること。本書では「安易に伝えすぎてしまうと、自分で考えなくなり、変えられる『頭の中』も変わらなくなってしまう」と説くが、チームを変える上で、まずは選手たちの意識から改革することに着手したのだそうだ。

 伝わるというのは、何も言葉だけのコミュニケーションとは限らない。風間監督の教えてくれるメソッドは、先輩や上司といった立場の人びと、ひいてはチームマネジメントを考えることにも通じる。今まさに、誰かを率いて導くことに悩んでいる人たちにきっと寄り添ってくれる一冊だ。

文=カネコシュウヘイ