「自分もADHD?」と思った人はもちろん、がんばる全ての人に効くコミックエッセイ

マンガ

更新日:2018/3/12

『おとなの発達障害かもしれない!?』(森島明子/イースト・プレス)

 近年、「大人の発達障害」が注目されています。“仕事でケアレスミスを繰り返す”“作業効率が悪く対人関係もよくない”など、ほかの人たちが難なくできていることがうまくできず、周囲の評価が下がるなどして生きづらさを感じてしまう「大人の発達障害」。研究が進み、広く知られるようになった子どもの発達障害に対して、大人の発達障害は周知されているとは言えません。検査を実施したり、その後のフォローをしてくれる医療機関もまだまだ少ないのが現状です。

「もしかして、自分も発達障害なのでは?」と思ったとき、まず手に取ってもらいたい本が『おとなの発達障害かもしれない!?』(森島明子/イースト・プレス)です。

 著者である漫画家の森島明子さんは、大人になってから発達障害のひとつである「ADHD(注意欠如多動性障害)」と診断されたひとり。本書は、うっかりミスが多いという森島さん自身の特性や発達障害の検査を受けてみようと思うまでの経緯、検査の様子、処方された薬「コンサータ」の作用、副作用、子どもの頃や家族のことなど、森島さんが実際に経験してきたことや学んだことをもとに描かれたコミックエッセイです。4コマ形式なので読みやすく、ADHDを中心に発達障害の知識を得ることができます。

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 検査内容など、主にADHDに関する“情報源”としても役立つ本書には、もうひとつのおすすめポイントがあります。それは、森島さんがこれまでに行ってきた日常生活や仕事での試行錯誤と、そこから得られた気づきの数々が追体験できるところです。

 発達障害は生まれつきのものといわれています。例えば、「多動性」「衝動性」「不注意」という特性があるADHDは、集中しづらいことなどが原因で、ケアレスミスが多いとされています。個人差はありますが、訓練を重ねたり薬の力を借りれば、ミスを減らすことはできるでしょう。しかし、どんなに努力しても、脳のつくりそのものは変わらないため、軽い風邪をひいたときのように薬を飲めばすっかり治るというようなことはありません。自分の特性とは一生つき合っていかなければならないのです。

 森島さんもさまざまな工夫や努力を重ねますが、うまくいったかに思えても自身の脳の特性に合わなかったのか、体調を崩して起き出せなくなってしまうなど、たびたびスタート地点に戻ってしまいます。心が折れても仕方がない状況にありながら、森島さんはそのたびに、それまで見えていなかった何かに気づきます。

「小さなことをひとつひとつ積み重ねることが未来をつくっていく」

 ADHDである自分自身ととことん向き合ったからこそ得られた森島さんの気づきは、周囲に理解されず苦しむことも多い発達障害の人や「自分も発達障害かも?」と思っている人はもちろん、障害のあるなしにかかわらずがんばっている、あるいはがんばってきた全ての人々の心にじんわりと効いてくる処方薬ともいえるものです。困難があっても前向きに、自分のやり方と自分のペースで人生と向き合い、自分とつき合っていくこと。本書はその大切さに気づかされる良書でもあります。

文=寺島和美