スマホ・ネット依存は現代の「明るい堕落」。私たちはどこまで堕ちていくのか?

社会

2018/2/23

『ゴーマニズム宣言SPECIAL 新・堕落論』(小林よしのり/幻冬舎)

 出る杭は打たれる、という言葉がある。目立ったことをする人は、他の人から憎まれ邪魔をされる、という意味だ。最近の言葉でいえば「炎上」。当事者は完膚なきまでにボコボコに叩かれ、発言に対して訂正、謝罪を行う。みんなと同じであることに安心し周りに合わせる日本人だからこそ、秩序が保たれ治安も維持されてきたのかもしれない。しかしそれは、単なる同調圧力に屈しただけなのではないだろうか。

 四半世紀以上衰え知らずの「出っぱなしの杭」、小林よしのり氏は『おぼっちゃまくん』をヒットさせた漫画家である。政治、天皇、戦争そしてAKB48、サブカルチャーに至るまで、歯に衣着せぬ物言いを貫いてきた人だ。雑誌『SPA!』や『SAPIO』などで連載していた「ゴーマニズム宣言」はさまざまなテーマを展開した書き下ろしでも発表されている。そのシリーズの最新刊が『ゴーマニズム宣言SPECIAL 新・堕落論』(幻冬舎)だ。『堕落論』といえば、坂口安吾著だが、本書は安吾へのオマージュが、内容やタイトル、よしのり氏の安吾のコスプレ写真にまで込められている。

■生きよ、堕ちよ

 戦後70年が経った。安吾の『堕落論』が発表されたのは終戦の翌年の昭和21年。戦火を逃れてきた人は誰しも、戦争中は耐え難い苦痛を味わってきたという。しかし安吾の実感は少し違う。

戦時中は「自分の頭で考える」ことなど意味がないから、国民一体感の中で耐え抜くしかない。それを安吾は、「私は考える必要がなかった。そこには美しいものがあるばかりで、人間がなかったからだ」と表現する。

 戦時中、命を賭して戦った若者たちが闇屋になること、未亡人たちの胸に新たな男の面影が宿ること、それは堕落だ。しかし、人間は堕落するものだし、それが本来の姿なのだ、と安吾は言う。

「人は正しく堕ちる道を堕ちきることが必要」

 現代を生きる私たちはこれを成し遂げているだろうか。

■現代の「明るい堕落」

 よしのり氏は、「現代の堕落」の例として、ネットとスマホ依存を挙げる。買い物は全てネット、CDは買わずYouTube、雑誌は買わずネットの情報、映画を観ずにネットの映像配信、SNSで承認欲求を満たす…。

 これらは全て、現代のテクノロジーかもたらした便利さと表裏一体の堕落だ。

テレビやパソコン、スマホなどの近代的な利器が普及するにつれて、世界中が同質化し、人々も平準化し、文化は薄っぺらくなっていった。

インターネットというグローバリズムを促進する利器は、世界中を均質化させてしまった。

スマホという悪魔は、人を明るく堕落させるから怖い。

酒やクスリなら堕落を自覚させようが、スマホは全く気づかず堕落していく。

「ごーまんかましてよかですか?」

 その決め台詞とともに、よしのり氏は警鐘を鳴らす。

人の非難ばっかりしているが、
自分の堕落から目をそらすんじゃないぞーっ!

 私たちは堕ちきったのか? まだ堕落を続けていくのだろうか?

 先が、見えない。

文=銀 璃子