あなたの会社は大丈夫? 働き方改革を左右するマネジメントの重要なカギ

ビジネス

2018/2/26

『働き方改革 個を活かすマネジメント』(大久保幸夫、皆月みゆき/日本経済新聞出版社)

 あなたの職場で「働き方改革」は順調にすすんでいるだろうか?

 よく「上司から残業禁止と言われるせいで仕事がまわらなくなった」なんて嘆きも耳にするが、それって「就業時間」と「業務量」のマネジメントに不具合がおきている証拠。

 とはいえ上司にしても、さらに上層部から「残業させるな」と言われ、一方で業績は落とせず板挟みに苦しんでいたりもする。その上、ちょっとハードマネジメントをすれば部下に「パワハラ」と呼ばれ、「リスクマネジメントをしろ」「コンプライアンスに留意」「メンタルヘルスに気を配れ」と、いまどきの現場マネジャーへのオーダーは実にさまざま。
テレワークの増加など部下の働き方の多様化にも対応せねばならず、ずばり「働き方改革」の成功は「現場マネジメント」にかかっているともいえるから責任重大だ。

 そんな悩ましい現場マネジメントについて『働き方改革 個を活かすマネジメント』(大久保幸夫、皆月みゆき/日本経済新聞出版社)は、新たな教科書になってくれそうだ。

■今ある問題点を整理することが「改革」の第一歩

 著者は「人」と「組織」に関する研究機関であるリクルートワークス研究所所長の大久保幸夫氏と、働く人々のさまざまな課題の相談に応じる産業ソーシャルワーカーの日本における第一人者・皆月みゆき氏。

「現在議論されているダイバーシティや働き方改革というのは、これまでの経験に照らし合わせても前例がなく、ロールモデルも目にしたことがないので、どうすれば正解なのか、正直わからない。“いままでに経験がない”ということが理由であれば、いったんその世界に真剣に向かい合ってみれば状況は一変するということでもある」と、豊富なデータや実例を通じ、現在の職場が直面する困難を分析し、マネジャーに求められるスキルについてもあらためて整理してくれる。
さまざまなケースを俯瞰的に見てきた二人だけに、その丁寧で客観的な視点が実に心強く、自分自身を振り返るいい材料にもなりそうだ。

■管理職の“抱え込みすぎ”を防ぐことも「改革推進」のカギ

 本書のタイトルにもあるように、本書の主眼はいかに「個性を活かす」マネジメントを実現するか。たとえば、多様な人々がそれぞれの個性をいかして成果をあげるよう導く「インクルージョン」というヒューマンスキル(対人関係能力)が重要になると本書はいう。そのためには部下の「強み」を言語化し、キャリアアドバイザーやコーチなど多彩な顔で接しながら、「どういうシナリオで育てていくか、一人ひとりに対する適切なプラン」を持つことが大事とのこと。

 さらに人事ビッグ・データの活用など時代の進化にもキャッチアップする必要があり、多様性が広がるからこそ「個別対応」がますます重要になるという実情を浮き彫りにしていく。

 だが、いくら管理者とはいえマネジャー自身がなんでもかんでも抱え込みすぎては潰れてしまうだろう。だからこそ、本書では「個別対応はマネジャーひとりが丸抱えするものではない」と強調する。部下や上司、OBやOGといった社内関係、あるいは産業医や産業保健師など専門家、また近年、日本でも知られるようになってきた産業ソーシャルワーカー(著者の皆月さんはその協会の代表だ)などの支援をうまく活用し、バランスを取ることもいまどきのマネジメントのツボだ。

 管理者たるマネジャーだって幸せに働けてこその「働き方革」。「部下を支えるだけでなく、部下から支えられたりもしながら互助の信頼関係を築いていく」柔軟な組織こそが未来へと持続する。

 マネジメント当事者でなくとも、これからの仕事に必要なスキルとは何か、組織で働く多くの人へのヒントになるに違いない。

文=荒井理恵