「あの夫婦は結婚して20年以上経つのに熱愛だ。ただし…」妻の隣では読めない!?ジョーク集

エンタメ

2018/2/27

『紳士淑女のジョーク全集』(井坂 清/さくら舎)

 テレビ番組を見ていて「つまらない」と感じる人が決して少なくないのは、多くのバラエティ番組のターゲットが若者層だからである。ある程度の年齢を重ねたうえ、トレンドに興味がなくなった人たち向けに作られた「お笑い」はメディアから消えつつあるのが現状だ。一過性のお笑いも悪くはないが、普遍的な教訓や風刺が含まれているお笑いもまた重要ではないだろうか。にわかには受け入れがたい苦い真実も、笑いの形式をとっているからこそ共感を覚えられる内容に変わるのである。

『紳士淑女のジョーク全集』(井坂 清/さくら舎)は週刊新潮で40年以上もジョーク欄を担当してきた著者が欧米の傑作ジョークをまとめた本だ。遠回しな表現、思わせぶりな台詞の数々は日本の「お笑い」に親しんだ人からすると最初はピンとこないかもしれない。しかし、著者のガイドによってジョークの裏側から垣間見えるストーリーに思いを馳せていくと、ページをめくる手が止まらなくなる。対象年齢は高齢者だが、ビジネスパーソンが大人のたしなみとしてジョークを覚える際にも役立つだろう。

 笑いは人間関係を円滑にすると著者は説く。長年連れ添ったパートナーに対しても、顧客や同僚、友人に対しても、相手を笑わせる回数が多いと諍いを招かない。その点で、ジョークの引き出しは大いにこしたことがないだろう。特に、相手が高齢者の場合は若者風のハイテンションな話より、落ち着きのあるジョークこそ場を和ませる。たとえば、夫婦関係についてのジョークは大きな賛同を得られるのではないだろうか。

「あの夫婦は結婚して二十年以上経つのに、まだ熱烈な恋愛関係を維持しているそうよ」
「まさか!夫婦のあいだに情熱がそんなに続くことは、ありえないわよ」
「早合点しないで。奥さんのほうはあるお医者さんと、ご主人のほうはお隣の奥さんと、よ」

 欧米のジョークでは老夫婦の関係を皮肉たっぷりに描いたものがとても多い。だが、すべての老夫婦がジョークのように愛が冷め切っているわけではないのだろう。ジョークとして「悪い例」を笑うことによって、自らの夫婦関係を見直すきっかけが生まれているのである。また、目上の人や宗教をからかえるのも、ジョークだけに許された特権だ。社会的地位の高い人物たちも容赦なくジョークのネタにされていく。

法廷で、顔を合わせた弁護士と検事がいきなりやりあった。
「この嘘つき!」
「何を言う。ペテン師め」
裁判長はさっと割り込んで言った。
「では、原告側、被告側の紹介が済んだので、開廷します」

「わたしは間もなく引退することに決めた。社長の席は若い者に任せようと思う」
「ありがとう」とパトリックは短く応じた。
「『ありがとう』だけか?」と社長は言った。「おまえはこの会社に2年そこそこしかいないのに、社長になるんだぞ。なのに、それだけしか言葉がないのか?」
「じゃ、言い直します。ありがとうございます、父さん」

 こうしたジョークの数々を読んでいると、短い中に登場人物の生活感が感じられて面白い。親から会社を譲り受ける息子のふてぶてしい態度からは、甘やかされて育った2代目の姿が思い浮かぶようだ。「一体、父親が頑張って大きくした会社はどうなってしまうのだろう?」と、そこまで想像力を働かせるとジョークの味わいも増していく。欧米のジョークは日本のお笑いのように分かりやすいオチは少ないものの、ジョークの内容を自分に置き換えて考えられる。だからこそ一編一編のユーモアをかみしめていく喜びが生まれるのだ。

文=石塚就一